◆今週のキーマン:海江田万里(民主党代表)●49年、東京生まれ。参院議員秘書、経済評論家を経て93年、日本新党から出馬し、初当選。民主党政権の経産相時代には国会で進退問題を追及されて号泣。12年12月から代表に。
「ヤンキー政党」脱出への覚悟を見せろ
あれだけ安倍晋三政権が「政治とカネ」で土俵際に追い込まれたにもかかわらず、いつの間にか土俵中央に押し戻した格好になってしまった。多くのメディアは民主党の枝野幸男幹事長にも問題が発覚したことで、「泥仕合」報道に終始しているが、明らかに閣僚の不祥事続出と枝野氏のそれとは重みが違う。なぜ倒閣一歩手前にあったのに野党第一党の民主党は「撃ち方やめ」の空気に急転してしまったか。ここが最大の問題点なのだ。
筆者の長い取材経験からすれば、「手打ち」のニオイがする。すなわち、民主党とすれば、野党間の選挙立候補者調整、選挙協力の足並みが揃わぬ中での「年内解散だけはカンベンしてくれ」、安倍政権としても追い込まれ解散は、できれば避けたい「わかった」という図式だ。これにて政権が最優先で成立させたかった今国会の対決法案「派遣の固定化」につながるとして民主党が反対の労働者派遣法改正案は、廃案で落着の可能性も出てきた。今後、解散問題は年が明けて仕切り直し、政権が主導権を取った形で時期が模索されることになる。政権に一本取られたということである。
それにしても、政治資金の活動費に「SMバー」とはふざけた話だが、よくよく考えてみれば、叩かれても突っつかれてもケロッとしている輩がウヨウヨしていることから、永田町自体がSMバーなのだと思えばナットクである。いずれにしても、政治資金の内情は一皮めくれば議員の大方が曖昧なのは明らかで、規正法を極めて厳格化するしか手はない。
さて、安倍政権に「逃げ切り」を許した形の民主党。そのリーダーである海江田万里代表の責任は重い。詰まるところ、ナニを目指す政党なのかを明示できないのが決定的弱点といえる。政権の不祥事追及は野党の役割で、それはそれで結構だが、党の進むべき路線を決定づけられなければ世論の風は吹かない。「中道」ならその規範を示し得なければ、国民の信頼はない。しかし、海江田氏、政権当時の旧幹部「6人衆」の思惑含みの勝手な言動に右往左往、党を丸く収めることに汲々としている。丸くするだけならだんご屋のオバチャンのほうがよっぽどうまい。加えるなら、政治勘もいささか乏しく、人の良さが逆に災いしてアクの強さに欠ける。「乱世の人」でなく「平時の人」との指摘があるゆえんだ。野党の党首の資質は、菅直人元総理くらいの「突破力」が求められる。菅氏は脇が固く総理としては失格だったが、人、他の政党の悪口を言わせたら、そのキレは天下一品だった。血力を振りかざし斬り込む野武士の蛮勇があったが、比べれば海江田氏、気取りがあり過ぎる。
今の民主党は「ヤンチャ」だけが目立つ政界の「ヤンキー政党」を脱していない。国民の血税でタダ飯ばかり食べていてどうする。時に、支持母体「連合」の言い分を押さえ込む腕力がなくてどうする。連携を模索する国会に議席のない維新の党の橋下徹共同代表にしばしばブレーキをかけられ、キリキリ舞いをさせられていてどうする。海江田氏に求められるのは、「ヤンキー政党」から脱出への覚悟ということになる。
◆政治評論家・小林吉弥