これも時代の移り変わりなのか。高校野球のレジェンド指導者・大垣日大高校の阪口慶三監督が退任し、指導業から引退する。79歳の阪口監督は10月2日に岐阜県で会見し、
「疲れが残るようになり、声が出なくなった。指導者としての責任を持ってやることが不可能になった」
と勇退の理由を語った。春夏合わせて甲子園に通算35回出場。教え子には中日ドラゴンズの朝倉健太、山田喜久夫、橋本侑樹らがいる。今年の夏も甲子園に出場すると、1回戦で近江高校に勝って甲子園春夏通算40勝を達成した。高校野球を取材するスポーツジャーナリストが言う。
「ここ数年は教職員がユニホームを着るのを手伝ったり、周囲の助けを借りながら、老体にムチを打って球児の指導にあたっていました。春の大会時にはファンやOBの声に応えてノッカーも務めていましたが、ボールが死んでいて、練習というよりファンサービスの形になっていた。今年は猛暑もあり、試合中に体調を崩したり、倒れたりすることが心配されていましたし…」
大垣日大サイドは以前から阪口監督の健康状態を危惧して、退任準備を進めていたという。
「若い頃は『鬼の阪口』の異名で、プライベートから熱血指導していました。伝説となっているのは、妻と実子とともに寮に住み込み、午前1時頃まで生徒の練習に付き合っていたこと。ナイター照明が消えても、白線を引く消石灰のラインパウダーをボールに塗り込んで、ノックを打っていました。しかし近年は穏やかな指導法に変わり、『仏の阪口』と呼ばれるように。練習の合間に虫取りや野菜栽培などでコミュニケーションをとりながら、選手に優しく接しているのが印象的でしたね」(前出・スポーツジャーナリスト)
後任は外部招聘せず、阪口監督が高橋正明副部長を指名。残した功績を引き継ぎ、次世代の育成にあたることだろう。
(田中実)