ゲームセットの瞬間まで勝敗がわからないのが野球の魅力。7月26日に行われたプロ野球の東京ヤクルト対中日の一戦でも、7回表を終わって10‐0と中日の一方的な試合展開だったが、7回8回でヤクルトが追いつき、延長10回にサヨナラ勝ちした試合は記憶に新しいところだ。
では、甲子園ではというと、8点差をひっくり返したのが最大で、夏の甲子園で2試合が記録されている。1つは97年第79回大会の1回戦、市船橋(千葉)対文徳(熊本)との一戦だ。
この試合、市船の先発・長尾康博の立ち上がりを攻めた文徳は3回表までで9‐1と大量8点をリードする。ところが市船は3回裏に4点、4回裏に2点を返し、7‐9と2点差にまで詰め寄った。そして迎えた6回裏。市船は大宮恵介のタイムリーで同点、さらに山崎純男の遊ゴロ失で勝ち越しに成功。その後も太田良樹の3点三塁打など怒濤の攻撃で一挙に10点を入れ、17‐9と大逆転し、試合を決めたのだ。市船は先発の長尾をリリーフした松尾直史の好救援が史上最大8点差からの大逆転劇を生むことに。結局、最終的なスコアは17‐10。8点差負けから7点差勝ちにした試合となった。
続く2試合目は14年第96回大会の1回戦。大垣日大(岐阜)対藤代(茨城)の一戦。大垣日大は1回表にいきなり8点を奪われたが、その裏の攻撃で4点を返し8‐4と4点差に。試合のこのまま4回まで進み膠着状態に陥ったと思われたが、5回表に藤代が2点を追加し10‐4とリードを広げる形に。だが、その裏から大垣日大が猛反撃を開始し、7回を終わって9‐10と1点差にまで詰め寄っていた。そして迎えた8回裏。同点に追いついた大垣日大はなおも2アウト二塁のチャンスで野崎文志がライトへ決勝の2ラン。12‐10の大逆転で藤代を降したのだった。
厳しい状況から決してあきらめることなく勝利をつかみ取った市船と大垣日大。どちらの試合もゲームを壊さなかったリリーフの存在が最大8点差からの大逆転を生んだ要因だったと言えよう。
(高校野球評論家・上杉純也)=敬称略=