本人の手書きや押印が義務づけられている「自筆証書遺言」について、法務省がパソコンなどのデジタル機器で作成できるよう民法を改正する方針であることが明らかとなった。社会部記者が説明する。
「遺言書には主に、手書きで作成して自ら保管する無料の『自筆証書遺言』と、本人が口で説明した内容を公証人が記述し公証役場で保管する有料の『公正証書遺言』があります。自筆証書遺言はお金を掛けずに気軽に作成できるものの、全文と日付、名前を本人が手書きし押印しなければならず、長々と全文を書いても少しでも不備があった場合は無効になる恐れがある。そのためなかなか利用が進まないという背景がありました」
しかし、遺書がない場合は遺産分割をどうするのかを相続人同士で話し合って決めなければならず、相続人の意見が別れた場合は骨肉の相続争いに発展するケースも少なくない。ウチは絶対に大丈夫…と思われるかもしれないが、相続争いのおよそ8割は遺産が5000万円以下の普通の家庭で起きているのである。パソコンでの作成OKの動きは、手軽に入力可能なデジタル機器での作成を認め遺書の利用を促進したい狙いがあるのだが、心配な面もある。
「パソコンで作成できるようになるということは簡単に偽造もできてしまうようになるということ。被相続人になりすましたり、パソコンに詳しくない被相続人の代理になった人物が、都合のいい内容にしてしまうことが考えられます。法務省関係者によると、被相続人がパソコンを入力する様子を録画するなどの偽造防止策を検討しているといいますが、果たしてどこまで効果があるか…。しっかりと本人が書いたということが証明される確認手段を検討してもらいたいものです」(前出・社会部記者)
改正された途端、むしろ相続争いが急増したなんてことにならなければいいが…。
(小林洋三)