日本サッカー協会が来年1月1日に東京・国立競技場で日本代表がタイと国際親善試合を行うことに、早くも疑問視する声が上がっている。長年、日本代表の取材に携わるベテランのサッカーライターは、その理由を次のように説明する。
「今の代表の大半は、海外組の選手。彼らは通常のシーズンの途中でもあり、1月は冬の移籍期間という大事な時期ですからね」
ブライトンの三笘薫らがプレーするイングランド1部(プレミアリーグ)では、冬の移籍市場は現地時間1月1日の午前0時から1月31日23時00分まで。プレミアリーグに先立って12月に再開されるEFL(イングリッシュ・フットボール・リーグ、2~4部リーグ)にも、これは適応されている。
ドイツではブンデスリーガ(ドイツ1部)だけでなく、2~3部でも移籍市場はイングランドと同じで、フランスのリーグアン(1部)、リーグドゥ(2部)も同日程だ。
レアルソシエダに久保建英がいるラ・リーガ(スペイン1部)の移籍市場は、イングランドより1日遅い現地時間1月2日に開かれ、他のリーグと同じく1月31日23時00分に閉まる。イタリアのセリエA~D(1~4部リーグ)はスペイン同様だ。
日本代表の大半はこの欧州リーグでプレーしている。彼らはステップアップを目指して移籍に踏み切る場合もある。また、優勝争いをしているチームや欧州チャンピオンズ・リーグなどの出場圏内にいるチームが補強のため獲得に乗り出し、移籍することもある。
年末年始にはどのリーグも、過酷な日程を組んでいる。移動が楽な欧州での試合ならまだしも、たった1試合のために帰国するメリットはない。スポーツ紙サッカー担当記者も、
「たった1試合のためだけに来てケガでもしたら、話にならない。しかも1月1日はFIFAが定める国際Aマッチデーではなく、日本協会も強制的に招集はできない。仮に選手が望んでも、チームは拒否するでしょう」
元日の代表戦は高い視聴率が期待できるため、チケット収入だけでなく高額の放映権料が協会に転がり込む。だが欧州組が来ないとなれば、捕らぬ狸の皮算用だ。
(阿部勝彦)