自民党・清和政策研究会(安倍派)の政治資金パーティー券をめぐる事件で、「異変」が起きている。毎日新聞や読売新聞が相次いで「安倍派7幹部が不起訴の見込み」と報じているにもかかわらず、この問題で「特ダネ」を連発してきた朝日新聞が、東京地検特捜部の最終判断を報じていないのだ。
毎日新聞は1月13日の夕刊で〈安倍派7幹部 不起訴へ〉と報じた。共同通信も同日、〈安倍派幹部の立件見送り検討 共謀の立証困難か〉と伝えた。読売新聞も同様だ。だが朝日新聞は1月17日朝刊に至るまで、「不起訴」とは報じていない。
政治ジャーナリストの田崎史郎氏は1月15日のTBSの番組で、次のようにコメントし、慎重な姿勢を見せている。
「今回の問題を先行して報道してきた朝日新聞が静かなのが気になる。なので、まだ何かあるかとも思っている」
元立憲民主党議員の有田芳生氏も同日のXに〈自民党安倍派の裏金問題で先行してきた「朝日新聞」が、今朝まで「1行」も東京地検特捜部の最終判断を報じていない〉と書き込んだ。
年末年始にかけて応援の検事も地方から呼び、異例の態勢で捜査してきただけに、安倍派の幹部は不起訴にし、幹部ではない国会議員3人を逮捕・起訴するだけで終わるならば、有田氏が指摘するように〈「大山鳴動鼠三匹」で終わるなら威信は地に落ちる〉といえる。
朝日新聞はこの問題で、一貫して報道をリードしてきた。昨年12月1日に安倍派について〈直近5年間で総額1億円を超える裏金を所属議員にキックバック(還流)していた疑いが浮上〉と先陣を切ったほか、最近でも1月13日に〈刷新本部安倍派9人裏金か〉との見出しで、自民党が設置した「政治刷新本部」に参加している安倍派10議員のうち9人が、パーティー収入の一部を「裏金」にしていた疑いがあると報じた。
いずれも〈関係者への取材でわかった〉としているが、これは地検からのリークではないかと取り沙汰されている。このため、自民党閣僚経験者に「地検の先兵」とまで揶揄されてきた朝日新聞が、検察にとって都合の悪い「不起訴」をしぶしぶ認めるのか、あるいは田崎氏が言うように「まだ何かある」のか。朝日新聞の「後追い」報道が注目される。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)