したり声と高らかな笑いが、ドラフト会議会場「グランドプリンスホテル新高輪」の通路に響いた。声の主は出席者の阪神タイガース、岡田彰布監督である。阪神は10月26日のドラフトで、青山学院大・下村海翔投手の一本釣りに成功して、指名権を獲得。指揮官は、
「他球団の動向はだいたい、思った通り。相手の出方を見てズバリ、ハマッた。100点でええよ。予定通り獲れたよな、おーん」
とニヤニヤが止まらない。
ドラフト前は1位指名の非公表化を訴えて「わかってたらおもろない」と、他球団にも「公表禁止」を提言するなど、撹乱戦法を繰り広げた。10月22日には、
「(1位指名は)どっちみち関西やから、ドラフトは。あっ…」
と口をふさぐ意味深発言を展開。他球団を牽制して、駆け引きに走った。その結果が一本釣りへとつながり、ドヤ顔の得意満面だったのである。スポーツライターが言う。
「阪神はシナリオ通りの、会心のドラフトとなりましたね。クジ引きなしで獲れた下村はコントロール抜群で、西勇輝のようなクレバーな投球をするタイプ。広い甲子園球場を本拠地にできるので、大胆にインサイドを攻めることで、大成しそうです。2位では四国アイランドリーグ『徳島インディゴソックス』の実力派投手、椎葉剛を獲得できました。こちらはパワーピッチャーで、藤川球児のようなクローザーになれるポテンシャルを持っています」
4位では注目のスラッガー、東海大熊本星翔高校の百崎蒼生を指名した。スポーツライターが続けて解説する。
「北條史也、山本泰寛をクビにして右打者の内野手が不足していたところだったので、将来性にあふれる百崎を獲れたことは、価値ある補強となりました。ファームの試合にたくさん出場させ、経験を積ませる算段のようです」
全てがうまくいった岡田タイガース。その舞台裏ではスカウトが何度も、握手で岡田監督に労われていた。この勢いで、10月28日に開幕する日本シリーズも連勝街道といくか。
(田中実)