これも当然と言うべきか、予想通り「今年度も私学助成金不公布」が決まった日本大学。盛山正仁文部科学相が10月24日の会見で、異例のダメ出しをしたのだ。
「ガバナンス不全が再発していることが明白となった。当省としてもこの判断は妥当なものと受け止めており、これに基づいて手続きを進めていくこととします。社会が注目している。学校法人としての在り方を考えてほしい」
日大執行部は同日に開かれた臨時理事会で、アメリカンフットボール部の薬物逮捕事件の対応を担当する沢田康広副学長の解任を提案したが、もし林真理子理事長以下、理事会が「沢田副学長さえ更迭すれば文科省の信頼を回復できる」と思っているなら、それは大いなる勘違いだ。
翌25日にはフジテレビが独自取材として「寮に大麻部屋がある」と警視庁に告発メールが送られていたと報道。日大執行部は数々の不祥事の元凶であるアメリカンフットボール部をいまだ廃部にせず、8月の日大の記者会見後、わずか5日で活動再開させた経緯がある。
同じく薬物事件でボクシング部員が逮捕された東京農業大学が、ボクシング部を今も無期限の活動停止処分(個人での試合参加は可能)にしているのとは対照的だ。
アメフト部を廃部にする権限もないことがバレた以上、文科省と外郭団体は慣習にならって、来年以降も私学助成金を不公布にするものとみられる。日本大学の付属校に通わせる保護者が、怒りをブチまける。
「日大というのはおかしな組織で、付属高校や中学に明らかに指導力不足、時代遅れのパワハラ気質の教職員がいます。保護者からも評判の悪い、そうした問題のある教師はたいてい、日大アメフト部OBや関係者。危険タックル問題が起きた後なのに、保護者の面談で『自分はアメフト部出身なんで』と、聞いてもいないのに自慢するんですよ。笑っちゃいますね。さすがに最近は薬物事件でヤバイと気付いたのか、自慢はしてきませんが」
こうした保護者には、納得できないことがあるという。
「なんで問題を起こしたアメフト部が、ここまで優遇されるのか。日大の体育会人脈はカビのように根深く、付属高校と付属中学の教職員の人事権にまで及んでいます。林さんは理事長就任当初から『体育会には手を出さない』と言ってましたよね。沢田副学長を更迭したところで、前理事長派の大学教職員、26校もある付属校や準付校、提携校に散らばる教職員、警察検察OBはどうにもできない。子供の大学については、外部受験を考えています」
文部科学省を怒らせたのも、日大アメフト部の薬物問題は同省外局のスポーツ庁に直結する問題だからだ。日大OBはアマチュアスポーツ団体の役員人選や五輪強化選手の育成法をめぐっても、いい評判は聞かれない。当然ながら、室伏広治スポーツ庁長官の耳にも届いていることだろう。
大学生の薬物汚染で複数の逮捕者を出し、これだけ社会問題化しているのに、日大からは体育会に所属する全学生を検査したという発表もない。なぜ林理事長は全ての体育会部員に検査をしないのか。「検査をすると日大アスリートからゾロゾロと、ドーピングや薬物が出てくるんじゃないか」という疑念が頭をよぎるのである。
(那須優子)