口は禍の元、とはいうものの、ついポロッと口をついて出たひと言で、20年以上続く番組が消滅し、芸能活動そのものの無期限休止を宣告されたタレントがいる。毒舌を売りに、関西ローカルのラジオ番組「誠のサイキック青年団」(朝日放送)のほか、5本のレギュラーを持っていた北野誠だ。
コトの起こりは2009年3月、「誠のサイキック青年団」で大手芸能事務所を批判したことだった。それが問題になり、番組は3月28日放送分をもって終了することになった。
ところが突如、最終回を待たずに、3月8日放送での打ち切り決定が発表され、さらには、28日に予定されていた番組関連のイベントも中止に。しかも4月13日には、所属する松竹芸能が、北野の無期限謹慎だけでなく「関係する役員、社員の懲戒処分」を公表したのである。つまりは本人だけでなく、彼を監督する立場にあった事務所スタッフにもペナルティーが科せられるという厳しい処分。芸能マスコミの関心は「北野がいつ、どんな内容の発言をしたのか」という一点に注がれることになった。
様々な憶測が飛び交う中、最後に残ったCBCラジオの「ごごイチ」を降板した翌日の4月28日、大阪市内のホテルで松竹芸能社長同席のもと、記者会見に臨んだ北野は、
「今年50歳。芸風については『毒舌家』というレッテルを貼られたことがあり、自分自身も言葉に縛られていた部分が多々あったと思います。20年の長きにわたってラジオをやる中で、事実に基づかない発言があったのは事実です。それを今回、きちんと受け止めて反省したいと思っています」
涙ながらに心情を吐露したのだった。
だが、本人の口から肝心の「不適切発言」の内容が明かされることはなかった。事務所社長によれば、3月上旬にラジオ番組リスナーから日本音楽事業者協会と朝日放送に投書があり、内容を調査。「北野が事実に基づかない不適切な発言をした」ことを受け止め、3月中旬に謹慎が決まった。
同時期に日本音楽事業者協会からも抗議を受け、謝罪したという。つまりこの降板劇の裏には音事協がなんらかの形で関与しているようなのだが、スポーツ紙デスクいわく、
「もともとこの番組は、イニシャルトークながら『こいつは超オトコ好きで、こいつを食った』『あいつはあんな顔してお口が上手』などなど、過激なやり取りがウリでしたからね。しかもリスナーイベントでは、その答えを暴露していた。1993年には山本リンダのヘア写真集を『買うたらアカン。整形してるのは有名』と茶化して猛抗議を受け、謝罪会見を開いたことが大きなニュースになった。そう考えると、これを20年以上続けてきたことの方が奇跡というべきですよ」
最終回の放送で「ごめんなさい」を繰り返した北野だが、越えてはいけない一線をついに越えてしまったというわけなのか。まさに口がとんでもない結果を招く顛末となったわけである。
(山川敦司)
1962年生まれ。テレビ制作会社を経て「女性自身」記者に。その後「週刊女性」「女性セブン」記者を経てフリーランスに。芸能、事件、皇室等、これまで8000以上の記者会見を取材した。「東方神起の涙」「ユノの流儀」(共にイースト・プレス)「幸せのきずな」(リーブル出版)ほか、著書多数。