全米自動車労組(UAW)が6週間に及ぶストライキの末、25%の賃上げを実現したことに、日本でも驚きの声が出ている。日本共産党の機関紙「しんぶん赤旗」が11月1日付の1面で〈労働者たたかい「記録的進歩」〉と伝えると、SNSで「しんぶん赤旗」がトレンド入り。日本維新の会の猪瀬直樹参院議員は〈賃上げは闘って獲ち取るものだ。(日本の)労組はもっとヤル気を出せよ〉と、SNSでストを煽った。
10月31日、日本銀行の植田和男総裁は記者会見で「来年の春季労使交渉はひとつの重要なポイントだ」と述べ、春闘での賃上げに期待感を示したが、欧米でストライキが相次ぐ中、日本のプロレタリアートは決起するだろうか。
「ヤマト運輸による3万人の個人事業主とパート職員の解雇撤回」を掲げ、全労連がストライキを計画していることも影響して、11月1日はSNS上で「ストライキ」の言葉が目立った。「賃上げ」という言葉も一時トレンド入りしたが、これは岸田文雄総理の年収が46万円増となる法案が提出された件だ。岸田総理は「行政改革の観点から、3割は国庫に返納する」と弁解しているが、3割の返還は年収増があろうとなかろうと、はじめから決まっている話。労働者の賃金が上がる前に、ずいぶん景気のいい話だ。
UAWがゼネラルモーターズ(GM)と新たな労働協約で暫定合意に至った内容は、生活費高騰に合わせた手当を支給し、4年半で25%賃金を引き上げる。初任給は70%増の時給30ドル(約4500円)となり、派遣社員は最高で115%の賃上げとなる。
偶然にもトヨタ自動車が11月1日、2024年3月期の連結純利益(国際会計基準)が前期比61%増の3兆9500億円になりそうだと発表した。従来予想に比べて1兆3700億円の上方修正で、為替の円安効果が利益を押し上げたという。だがトヨタ自動車労組がストをする気配はなく、1兆円を超える利益は労働者には回ってきそうもない。
アメリカのバイデン大統領は「労働者が受け取るべき賃金、待遇、リスペクトを与えるものだ」として、ストライキによる暫定合意を歓迎。日本とはずいぶん違う。
(健田ミナミ)