ソフトバンクの戦力外リストに驚いた。20人以上もバッサリ切った中に、上林誠知や森唯斗の名前が含まれていた。2人とも「オレがクビ?」とビックリしたと思う。上林は28歳で、森は31歳。まだ老け込む年齢やない。復活する可能性は十分あるし、他球団が放っておかないと思う。争奪戦になってもおかしくない。
上林は毎年のように故障に泣かされてきたけど、5年前には全143試合に出場して、打率2割7分、22本塁打をマークした。外野の守備も足も十分に1軍レベルで、将来のホークスを背負って立つ逸材と見ていた。ここ数年はリズムを崩していたが、打撃の調子が戻ればレギュラーを張る力はある。
森も若い頃と比べて球威は落ちたけど、まだ使える。
何よりも球団の功労者に対する処遇に首をかしげてしまう。入団1年目の2014年から勝利の方程式に入り、7年連続で50試合以上に登板。17年から4年連続の日本一に貢献した。去年から先発に転向してまだ2年。もう一度、リリーフに回す手はなかったんかな。リリーフ投手は経験も大きな武器となる。実際、今年は若い中継ぎ投手が勝負どころで打たれるケースが少なくなかった。
ソフトバンクは去年の松田宣浩の時も感じたが、生え抜き選手の契約にドライな面がある。その一方で大金をはたいて、FA選手や外国人を獲ってくる。今年も日本ハムからFA移籍した近藤健介が本塁打、打点の2冠を獲得して、ロッテから加入したオスナが抑えで活躍。メジャーから復帰した有原がチーム勝ち頭の10勝を挙げた。それで優勝できればいいけど、結果は3位。一方で、50人以上も抱えた育成選手で支配下に登録されたのは1人だけ。何のために球界初の4軍制としたのかわからない。退任した藤本監督も4軍の選手のことはほとんど知らんと思う。特徴を知っているのは2軍の選手までとちがうかな。
千賀、石川、甲斐、周東、牧原と、確かに少し前は育成からチームの主力に成長する選手が続出した。でも、ここ10年、育成も含めたドラフトで獲得した選手を見たら、決して育成の上手な球団とは思えない。ドラフト1位でも辛うじて1軍戦力になっているのが、甲斐野と松本裕ぐらい。これでは球団としての長期計画が立てられない。今年、セで優勝した阪神が大山、近本、佐藤輝、森下とドラ1がスタメンに並んでいるのと対照的。4軍や3軍の育成選手より、まずはドラフト上位で獲得した選手をきっちりと育てないといけない。
今の時代やったら、僕も育成での入団やったんとちゃうかな。足の速さを買われて早い段階で1軍での出場機会を与えてもらって、1軍のレベルを肌で感じたのが大きかった。コーチによく言われていたのが「2軍慣れしたらアカン」ということ。自分ではプロ入りの時から、3年やって結果が出なかったら辞めようと思っていた。ソフトバンクのような4軍制なら、西本監督の目にとまることもなかったし、1軍に上がれないまま引退していたかもしれない。
ソフトバンクはまず誰か1人が4軍からの高い壁を乗り越えることが必要。「アイツができたならオレも」という雰囲気にならないといけない。「あの先輩はあんなに頑張っても1軍から声もかからなかった」となれば、4軍制の先行きは暗い。
福本豊(ふくもと・ゆたか):1968年に阪急に入団し、通算2543安打、1065盗塁。引退後はオリックスと阪神で打撃コチ、2軍監督などを歴任。2002年、野球殿堂入り。現在はサンテレビ、ABCラジオ、スポーツ報知で解説。