全国で相次ぐクマの襲撃事件。環境省の発表によれば、今年4月から10月末までに過去最多の180人が被害に遭い、そのうち5人が亡くなったという。かつてないクマの狂暴化は、さらなる大災害の前触れかもしれないのだ。
「本来、クマは臆病な動物で、積極的に人を襲うことはありません。市街地でこれだけの人が被害に遭うのは異常事態と言っていいでしょう」
こう話すのは地震前兆研究家・百瀬直也氏。クマ被害と地震の意外な関係についてこう続けてくれた。
「実は2020年にもクマ被害が続出。9月から10月にかけて、新潟県や石川県、岩手県で63人が負傷し、2人が亡くなりました。それに符合するかのように同じ年の9月12日には宮城県沖でM6.2最大震度4の地震が、12月には青森県東方沖を震源とする最大震度5弱の地震が発生しました」
果たして、クマが次々と人を襲うのは大地震の前触れなのか。他の生物に目を向ければ、
「ナマズが暴れる」
「深海魚が打ち上げられた」
といった前兆行動はよく知られているが‥‥。
大阪大学で名誉教授を務めた池谷元伺工学博士(故人)は著書「大地震の前兆〜こんな現象が危ない」(青春出版社)の中で、こう記している。
〈地震が起きるとき、すでに二週間近く前から、地殻の小さな破壊が起きている。このときに生じる電磁波を動物たちはキャッチして不安になり、それが異常行動となって現れるのだ〉
同書は「ウマが人間に嚙みつこうとした」「ブタが仲間同士で尻尾を食いちぎった」という前兆行動を紹介している。同じ哺乳類のクマが電磁波の影響を受けても不思議ではない。
前述したクマの人的被害は、秋田県が61人で最多。次いで岩手県が42人、福島県13人、青森11人と東北地方に集中しているが、百瀬氏は広範な「目撃情報」に着目してこう語る。
「注目すべきは、生息数が少ないとされる千葉県や茨城県でも目撃されている点です。今年9月2日に千葉県館山市から目撃情報が寄せられると、その3日後には同県北西部で2度の地震が観測されています。茨城県でも、常陸太田市でクマが目撃された翌日の9月29日、同県北部を震源とする最大震度3の地震が発生。これまでのデータから推測するに、クマが目撃されて1カ月以内に小規模の地震が、2カ月以内に大きな地震が発生する傾向があります」
警戒すべき野生動物はクマに限らない。
「10月25日にはイノシシが千葉県の市街地に出没し、3人がケガをしました。江戸川を渡って埼玉県春日部方面へ移動しているという話も気になりますが、クマもイノシシも鋭い嗅覚を持っています。地震の前に、地中の岩石破壊で生じた電磁波が何らかの影響を与え、人に危害を加えるという異常行動に駆り立てている可能性は否定できません」(百瀬氏)
10月31日には千葉県東方沖でM3.3、11月2日には同県北部でM3.4の地震が観測された。人を襲うイノシシの出没も要注意といえよう。