大相撲の一人横綱、照ノ富士が、一年納めの九州場所(11月12日初日・福岡国際センター)も休場する。3場所連続通算19度目、横綱昇進後在位14場所で8度目になる。9日に発表された休場理由の診断書は「腰椎椎間板性腰痛」だった。
31歳の照ノ富士の体力はもはや限界だ。急激な体重増による両膝痛と糖尿病の影響が大きく、いつ引退してもおかしくない状況なのだが「これができないんです」(相撲担当記者)という。
「今、照ノ富士に辞められて横綱不在となれば興行がなりたたなくなる。相撲協会にそんな強い危惧がある」(前出・相撲関係者)
照ノ富士が引退できない、もう一つの事情がある。来年1月場所後に行われる2年に1度の「理事選挙」だ。過去2回は無投票、定員(10人)と同じ立候補者数だったからだが、
「理事選直前の九州場所が鍵になるんです。各一門で誰を(理事)候補者にするかを話し合うのが慣例です」(別の相撲担当記者)
まさに12日から初日を迎える舞台裏で、次の相撲協会の役員を決める「談合」が中洲の夜で繰り広げられるというわけだ。
理事候補には5つある一門(出羽海3人、二所ノ関3人、時津風2人、高砂1人、伊勢ケ浜1人)がそれぞれ調整を行い候補者として擁立する。ところが各一門の調整とは別に、宮城野親方(元横綱白鵬)が虎視眈眈と理事選の立候補を画策しているのは関係者では知られた事実だ。
「現役時代が長かったことで、豊富な資金力がある。もちろん法を犯すようなことはしないですが、いずれ理事長職を狙う白鵬についていく親方衆が出てこないとは限らない」(前出・別の相撲担当記者)
宮城野親方と照ノ富士は同じモンゴル出身なのだが、17年に起きた元横綱日馬富士による暴行事件で両者の仲には大きなミゾがあるまま。そして宮城野親方は照ノ富士の師匠である伊勢ケ浜親方と同じ伊勢ケ浜一門だ。
「この一門では浅香山親方(元大関魁皇)の擁立がほぼ決まっていると言われています。結局、伊勢ケ浜親方からすれば、いま照ノ富士に辞められてしまっては対宮城野親方を考えたときに立場が拮抗してしまうわけです」(前出・別の相撲担当記者)
今、照ノ富士が引退できないのには深い事情があるのだ。
(小田龍司)