一方、意外にも数多くの伝説の中でも、日本の「3大埋蔵金」と称される、「豊臣秀吉の黄金」は雲行きが怪しくなっている。
「それらしい文章は残っていますが、豊かな鉱脈が後々まで息子の秀頼に財をもたらすと言い残した可能性が高く、財宝そのものが隠されているという意味ではないと思われます」
と、八重野氏はその可能性を否定する一方で、
「宝探しと言えば土を掘るイメージがありますが、その前にやらなくちゃいけないことがある。まずは資料を掘って、正確な情報を得ることが大事なのです」
埋蔵金研究先駆者・畠山清行氏は「土を掘るより、資料を掘れ」という言葉を残し、八重野氏はこの大鉄則をひたすら実践しているのだ。
伝説の信憑性を見分け、謎文の解読で昔の人と知恵比べをし、隠した人の身になり、時間が経っても変わることのない目印、「不動のもの」を追うのだという。その際、金属探知機は必須だが、時にはレーダーやファイバースコープなどの最新機器を用いることもある。が、それでもパワーショベルなどの重機は絶対に使用しないという。
「昔の人が隠したものですから、技術的にそんなに深い地中に隠すことはできない。それに、いつか誰かが掘り出すために隠したのですから、その意味でも地中深くはありえない。実際に地中から財宝が見つかったケースを見ても、せいぜい5センチから1.5メートルほどです」
とはいえ、発掘現場に立つと「もう少し深く掘れば‥‥」、という考えがよぎることも否定できない。
いずれにせよ残念ながら財宝の発見には至っていないのだが、今回の前橋のように、伝説がない場所でも、財宝がザクザク出るなんてケースもある。
「1956年には、今のユニクロが入っている銀座の小松ストアーだった場所から、多量の小判が見つかって大騒ぎになりました。また1963年には、東京都中央区新川の日清製油本社で、ビル改装工事の際に江戸時代の小判が見つかっています。ともに昭和30年代ですが、この時は戦後の日本で多くの工事が行われる中で、財宝が掘り当てられる『ゴールドラッシュ』の時代だったわけです。今後、お宝が発掘される場所はすでに掘り返された都市部ではなく、田舎、例えばかつての豪商の家があった跡地とか、蔵がある家の、蔵の中に隠されていた財宝が発見されるなんてケースが出てくるかもしれない」
最後に今もお宝ハンターとして現役で活動を続ける八重野氏はこう語る。
「今度、埋蔵金伝説の地を再訪する私を追ったドキュメンタリー番組をテレビで放映するんです。一攫千金より、伝説が真実かどうか突き止めるため、これからも掘り続けますよ」
スリル満点、男のロマン満載の埋蔵金探しの夢を掘り当てた男の笑顔があった。