秋のGⅠ戦は引きも切らず行われており、今週は春の安田記念と並ぶマイル王者を決める大一番、マイルCSが京都で行われる。
毎年のようにスピードと瞬発力を競う激しい競馬が展開されているが、今年はどんなドラマが誕生するか、目を離せない一戦だ。
顔ぶれが、またいい。連覇を狙うセリフォスのほか、シュネルマイスター(NHKマイルC)、ダノンザキッド(ホープフルS)、ダノンスコーピオン(NHKマイルC)のGⅠ勝ち馬4頭を含め、出走馬のほとんどが今年の重賞勝ち馬という豪華版。
前哨戦を叩き台に調子を上げてきた馬や別路線組も含め、しっかりとここを照準に全力を注いできた馬ばかり。いずれの馬が勝ち負けしても不思議はないほど好メンバーで、どう転ぶかまったく予断を許さない、馬券的にも極めておもしろい一戦と言っていい。
まずは過去のデータをひもといてみよう。
02年に馬単が導入されて以降、これまでの21年間、その馬単での万馬券は5回(馬連は4回)。大きく荒れていなさそうに思えるが、この間、1番人気馬は6勝(2着4回)、2番人気馬は1勝(2着5回)。1、2番人気馬によるワンツー決着はわずか1回のみ。順当には決まり難いGⅠ戦であることがわかる。
とにかく大きく引き離しての圧勝というケースはマレで、連対を果たす馬と、そのあとに続く馬との差がわずかという接戦が多い。ちょっとした仕掛け、コース取りの差が勝敗を分けることが多く、ジョッキーの腕や判断がモノを言うレースとも言えるだろう。
そうした意味でも予想は難解だが、スピード、決め手に勝る馬が勝ち負けしていて、勢いに乗る4歳馬がよく連対している。続いて実績ある5歳馬が好成績を挙げているのだが、ノビシロ十分で斤量が1キロ軽い3歳馬もよく頑張っており、断じて軽くみるわけにはいかない。
もろもろ考慮しても今年は一筋縄では収まりそうになく、悩み迷うところだが、最も期待を寄せてみたいのは、5歳馬のジャスティンカフェだ。
前走の毎日王冠(7着)は、4カ月ぶりの実戦。やや落ち着きを欠いていたことを思うと、やはり久々で本来の状態に戻り切っていなかったとみるべきだろう。それに比較的前残りの競馬。しまいのよさを生かすタイプでもあり、流れも向かなかった。
しかし、休み明けを使われたことで気配、動きも一変。この中間は落ち着き払って実にいい雰囲気で、1週前の追い切りも軽快でリズミカルだった。
厩舎スタッフも「いい感じの動き。馬体に張りが見られるのもいい。間違いなく前走以上」と口をそろえるほどだ。
ならば、強敵相手でもやれていいのではないか。
昨年の同レースは6着。勝ったセリフォスとはコンマ4秒差だったが「昨年からみて、地力強化。持ち味(強烈な末脚)を生かせれば」と、厩舎スタッフも期待感を口にしている。
確かに春の最後の一戦となった前々走のエプソムCは、目の覚めるような豪脚を見せての勝利。直線の長い京都の外回りは間違いなく合っている。
4代母はオークス馬シャダイアイバーで、安田記念、マイルCS勝ちのエアジハードが近親にいる血筋。血統的背景からも期待していい。
穴中の穴は、3歳馬のエエヤンだ。こちらも休み明けを一度使われて大幅な良化ぶりを見せている。マイル戦は〈3 0 0 1〉と得意にしており、一発があっても不思議はない。