「心が女」という理由で女湯に入る、不届き者が現れた。これに対し、LGBT理解増進法に原因があるとして「廃止すべし!」と息巻くのは、日本保守党の百田尚樹氏だ(11月15日付、自身のYouYubeチャンネル)。その一方で「LGBT理解増進法とは関係がない」と、自民党の稲田朋美氏が主張する。
LGBT法には、自認する性別で女湯に入れる旨の記載は存在しないが、実は成立前に法案の中身がごっそり入れ替わっていることをご存じか。大雑把に言えば「LGBTの意見に文句つけるヤツはぜってぇに許さねぇ」から「みんな折り合いよくやろうぜ」に路線変更したのである。いわば、ニンニクチャーシュー背脂マシマシ特盛ラーメンを頼むつもりが、直前で健康志向に目覚めて、アッサリ野菜白湯ラーメンに変更したようなものだろう。
やるべきはLGBT法を叩くことではなく、心が女性でも体が男性であれば、女湯に入ったら逮捕される、という事実の周知だろう。実際に、今回も逮捕されているのだから。
では、稲田氏が正しいかといえば、彼女は法案成立前に「心は女性で体は男性の人が女湯に入ることはない」と断言しており、これもデタラメだということが証明された。対策もフォローもせずに法案を通した張本人が「関係ない」で済ませてしまえば、それは問題になろう。
厚労省からは「公衆浴場は男女別に分けるべし」との通達が出ているが、法的拘束力はなく、不届き者を抑制するほどの効果は期待できない。
誤った法解釈で騒いだり、通すだけ通して放ったらかしにしたり。更にあろうことか、最高裁の裁判官が「自認する性別で風呂に入れたとしても、混乱は極めて稀」などと言い出す始末。それからわずか1カ月あまりで「極めて稀」らしい事件は起きた。
こんな状態が続けば、施設の管理者はたまったものではない。自認する性別を尊重しようという世の中の流れに「ダイジョーブだぁ」と軽く太鼓判を押す裁判官。結局は判断と後始末を施設に丸投げだ。通報した際には「差別だ」と訴えられるリスクもある。施設にとっては死活問題となる案件であり、早々に法的拘束力を伴うルールの策定が必要だ。
「女性スペースを守るルール」として「LGBT理解増進法のガイドラインに、身体性別による施設利用を明記すること」を訴える声も出ており、署名活動にまで発展している。
このままでは、安心して温泉旅行に行けなくなるのではないか。自分あるいは家族、恋人の横に「変な人」が存在するかもしれないのだ。
(群シュウ)