サッカーW杯アジア2次予選で、日本代表の第2戦となるシリア戦(サウジアラビア・日本時間21日午後11時45分開始)の地上波テレビの放送交渉が決裂した。
日本サッカー協会(JFA)が「シリア戦の放映権交渉を断念した」と民放の主要テレビ局に伝えたのは20日深夜。日本代表の公式戦でテレビ中継がなくなるのは、1998年にW杯初出場を決めて以来、前代未聞の事。JFA・田嶋幸三会長は「僕ら(JFA)の手の届かないところに行ってしまった」と完全に白旗を上げていた。
放送できなくなった理由は明白だ。2次予選では各国の協会がホームゲームの放映権料を決められるが、母国が内戦下にあるシリア協会が頼ったのはアラブ首長国連邦(UAE)の代理店「PRO」だった。試合前日の公式会見の場に同社のCEO(最高経営責任者)だというユセフ氏が突然現れ、「JFAとの交渉で18年ロシアW杯予選の時よりも30から40%、放映権料は値下げした」と明言。交渉が決裂したのはJFAにあると主張した。
一方の田嶋会長は「(放映権で)儲けようとしている」とコメントしていたが、アジアサッカー連盟(AFC)が放映権を一括で持つ前については、
「JFAが放映権ビジネスで儲けていましたからね。AFCは日本も儲けてきたじゃないか! という主張を曲げないわけです」(JFA担当記者)
例えばサッカー発祥の地のイギリスはどうか。
「1996年に政府が巨額の放映権ビジネスに釘を刺すべく、放送法を改正して国営放送(BBC)などに無料放送を推奨する『ユニバーサル・アクセス権』を盾にして、サッカーの代表戦や五輪競技などは国民が無料で見られるシステムを作っているんです」(前出・JFA担当記者)
アジアサッカーで儲けているJFAから取れるだけ取ってやれ! のノリは今後も続く流れ。JFAの無策が続けば、サッカー日本代表がテレビから完全に消える日もそう遠く無い。
(小田龍司)