資金難なのか、それとも人材難なのか。サッカー次期日本代表監督選びが、早くも暗礁に乗り上げている。
長年、日本代表を取材してきたベテランのサッカーライターが言う。
「これまでの慣例では、ワールドカップの本大会が始まる前には、次期監督選びが煮詰まっているのが普通です。でも今のところ、日本サッカー協会に、そんな動きはない。明らかに後手に回っています」
「FIFAワールドカップカタール」は11月20日にスタートし、12月18日には決勝戦を迎える。優勝経験のあるドイツやスペイン、南米のコスタリカと同じE組に入った日本は苦戦必至で、グループリーグ敗退の可能性は高いだろう。大会が終わればカナダ、アメリカ、メキシコの3カ国が共催する26年大会に向けて、年明けには新たな代表監督を決めなくてはいけない。
通常、代表監督は反町康治氏が委員長を務める日本サッカー協会の技術委員会が候補者を選考して一本化し、田島幸三協会会長に意見を上げる。田島会長はそれを元にして理事会を開き、代表監督が決まる流れになっている。
サッカー協会内にはこれまで国内外、国籍を問わず代表監督候補のリストが存在すると言われている。そのリストには、今回のW杯後に他国との契約が終了する名将たちの名前も含まれる。過去にもそんなリストの中からフィリップ・トルシエ、イビチャ・オシムやジーコ、ヴァヒド・ハリルホジッチ、アルベルト・ザッケローニといった人材を、代表監督に招いている。
だが、時代は変化していると、スポーツ紙サッカー担当デスクは解説する。
「以前はサッカーの代表人気が高く、協会の財政は潤っていた。そのため、外国人の代表監督には、年俸に加えて日本滞在費などの経費を含め、年間数億円単位の金がかかっていたのです。今、協会の財政を考えれば、それは厳しい」
森保一監督のようなJリーグ監督経験を持つ日本人なら比較的年俸が安い上、家賃などの経費はいらない。だが名古屋グランパスの長谷川健太監督、川崎フロンターレの鬼木達監督ぐらいしか、後任候補者が見当たらないのも現状だ。
カタール大会の結果によっては、森保監督続投の選択肢もあるらしい。だがもたもたしているうちに、安価な名将を逃がすことになりかねないのだ。
(阿部勝彦)