新型コロナウイルス感染症やインフルエンザが流行する中、医療機関では、深刻な「薬の供給不足」が問題になっているという。
今年8月に行われた日本製薬団体連合会と厚生労働省の調査によると、9077品目のジェネリック医薬品のうち「限定出荷」「供給停止」となっている医薬品は2928品目に上ると報告された。
その背景には2つの原因がある。1つは、新型コロナウイルス感染症やインフルエンザの流行により、風邪薬や解熱剤、咳止めが数多く処方されたことだ。厚生労働省の発表によると、コロナウイルスの感染者数は5類移行後、最少であることが明らかになったばかり。しかし、冬頃には感染が再拡大する恐れがあるとも指摘されている。
2つ目は、一部のジェネリック医薬品メーカーの製造不正が発覚したことにより、出荷停止や業務停止が起こってしまっている点にある。ジェネリック医薬品そのものの供給自体が減少してしまっているから厄介だ。
厚労省は医薬品メーカーへの支援を経済対策として盛り込む方針を明らかにしたが、今も供給の不安定さという問題は残されている。
しかし、薬不足といっても病院にかかった際に、薬を処方してもらえないというケースに直面することはほぼないと言っていい。多くの薬局では、他の製薬会社から同じ成分の薬を取り寄せたり、他の薬局を紹介したりといった対応がされているからだ。
コロナやインフルに罹患した際は従来通り医療機関を受診して、そこで処方された薬を飲むことが一番である。しかし、万一の場合に備えて、解熱剤や咳止め薬と同様の成分の市販薬を備えておくと安心かもしれない。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。