都内デザイナーズイベントで販売していた「納豆のように糸を引くマフィン」による食中毒事件は衝撃的だったが、もう手作りスイーツは安心して食べられない。今度は「大麻クッキー」が問題になっているのだ。
茨城県で大麻に似た合成麻薬成分を含む「大麻クッキー」を食べた数人が、吐き気などの体調不良を訴えて救急搬送される事例が相次いでいる。クッキーの外袋には、今年8月に取締り対象になった合成麻薬成分「THCH」(テトラヒドロカンナビヘキソール)の化学物質名が書かれていた。
「大麻クッキー」とは、大麻に含まれる成分を人工的に作り出した合成麻薬成分を練り込んだクッキーのこと。同様の製法で「大麻チョコ」を取り扱う雑貨店もある。大麻の麻薬成分は「油性」なので、油分の多い菓子類に混ぜ込まれることが多い。グミは警戒しても、クッキーは友人知人に「親が作った」「自分が作った」と言われると、さらに断りにくい。
北海道厚生局麻薬取締部は11月21日、札幌市中央区の販売店を立ち入り検査し、同店で販売されていた「大麻クッキー」を押収。翌22日に分析結果が出るまで、商品の販売停止命令を出した。
この日、厚生労働省は、食べた人が相次いで健康被害を訴えた「大麻グミ」から検出された合成化合物HHCH(ヘキサヒドロカンナビヘキソール)を、医薬品医療機器法(薬機法)に基づき指定薬物に指定した。12月2日から所持や使用、流通が禁止される。
厚労省の対応のマズさは否めない。新しい合成麻薬成分が出るたびに規制しても、業者は分子構造を変えた「脱法大麻」をすぐに売り出す。大麻に含まれる、鎮静作用のある成分「CBD」入りの食品は販売が規制されていないが、CBD入り食品に違法成分が混在して、市中に流通している。業者は消費者を大麻中毒にさせるため、あらゆる誘惑を仕掛けているのだ。
THCH、HHCHなどの合成麻薬成分は総じて「カンナビノイド」と呼ばれる。当初から「カンナビノイド成分」と類似物質CBDをまとめて薬機法の取締り対象とし、医療用大麻の使用のみに限っていれば、ここまで大学生や若者に大麻汚染は広がらなかっただろう。
医療用大麻は10月24日の閣議決定で「大麻取締法」に使用罪を設ける一方で、医薬品としての使用を解禁する法案改正を決めた。医薬品として流通させるなら、10月の時点で大麻成分を含む食品販売を全面禁止にしていれば、大麻グミの健康被害はここまで広がらなかっただろう。
今年のハロウィンイベントは、新型コロナの影響と大麻グミの台頭とともに「お菓子配り」は中止になった。クリスマスやバレンタインデーのお菓子配りも、今後は消滅するかもしれない。
(那須優子/医療ジャーナリスト)