衆院予算委員会に衝撃が走った。日本維新の会の青柳仁士議員が11月22日の同委員会で、岸田文雄総理や武見敬三厚生労働相が日本医師会(日医)の政治団体「日本医師連盟(日医連)」から高額の献金を受けていることを指摘。東京新聞は日本医師会からの岸田総理と武見氏への献金額はそれぞれ1400万円、1100万円にのぼると報じた。
岸田総理は早稲田大学の後輩でもある青柳氏に「献金によって政策が変わることはあってはならない」と答弁したが、これを信じる有権者はいないだろう。なにしろ岸田政権はこの1年だけで、2回も健康保険料を値上げしたのだ。
最初は今年1月、サラリーマンなどが加入する全国健康保険協会(協会けんぽ)の健康保険料率および介護保険料率、失業保険を4月納付分から値上げすると発表。さらにフリーランスや自営業者が加盟する国民健康保険料についても、10月27日に開かれた社会保障審議会医療保険部会で、2024年度の国民健康保険料を上限104万円から106万円への引き上げを決定した。
さらに岸田政権は政府の税制調査会で、退職金や通勤手当への課税、生命保険控除の廃止、16歳以上の子供を育てる育児世帯への税控除額の縮小、週10時間以上働くパート主婦にも雇用保険加入…と、仰天増税プランを検討している。
健康保険料を上げる前に考えねばならないのは、協会けんぽや国民健保が供出している「老人医療への支援金」だ。2022年度の医療費総額は46兆円で21年度から1.8兆円増え、2年連続で過去最高を更新し続けている。中でも75歳以上の医療費は18兆円で過去最高となったが、この18兆円の約3分の1にあたる6.5兆円を、現役世代が支払う健康保険料で補填している。この老人医療6.5兆年の支援金がなければ、現役世代の健康保険料はなんと、2分の1から4分の1に減額できる。サラリーマンの場合、勤務先が半額を負担しているため、支援金を廃止すれば企業負担分を給与に上乗せできるのだ。
新型コロナで子供から老人まで自由を奪われ、中には職も失った人がいる中、医者だけが46兆円も丸儲け。筆者の元には「医者を悪者に仕立て上げている」という批判が寄せられたり、陰口や誹謗中傷もネットで散見されるが、ならば日本医師会の会員であるなら何故、自民党への政治献金をやめろと声を上げないのか。
毎年払っている日本医師会の会費に「政治献金」が含まれているのがわかっていても、その献金のおかげで老人に湿布薬や保湿ローションを配って儲けるオイシイ商売が続けられるから、誰も反対などしない。
まるで饅頭の下に悪人が小判を忍ばせ「おぬしも悪のよう」「いえいえ、お代官さまほどでは」のやり取りそのもの。日本の悪徳医師達が、岸田総理と武見氏に納めた小判「2500万円」は、医者のポケットマネーではない。それは一方的に増税、値上げされた、我々の健康保険料だ。
(那須優子/医療ジャーナリスト)