放送中のNHK朝ドラ「ブギウギ」の劇中では、日本軍が米軍に勝っているという「大本営発表」に、日本人が舞い上がっている。だが第二次世界大戦の結末を知っている我々も、笑っている場合ではない。戦後80年以上経っても、小池百合子都知事と自民党、公明党の大フカシ「高校の授業料無償化」という「大本営発表」を、新聞とテレビが垂れ流し続けているからだ。
小池知事は12月5日、私立を含む全ての都内の高校の授業料助成について、これまでの世帯年収910万円の所得制限を撤廃すると発表した。これを新聞テレビや一部メディアニュースは「高校無償化」と報じ、検索サイトやSNSのトレンドワードになったが、ちょっと待ってほしい。
小池知事の言うままに、メディアは「無償化」を連呼しているが、都内に暮らす高校生の学費が全てタダになるわけではない。東京都は都立校の学費平均12万円、私立校の学費平均48万円に基づき、年収910万円未満の世帯に上限48万円の授業料を助成してきたにすぎない。
東京都の調査によれば、令和3年度(2021年度)の受験料と入学金、施設費、教科書代を含めた私立高校の初年度経費は93万円を超えた。制服代を加えると、100万円の大台に乗る。48万円の助成金だけで「高校無償化」なんて、とても言えたものではない。
さらに2024年度の高校受験スケジュールをみると、私立高校の合格発表が2月中旬に発表されるのに対し、都立高校の合格発表は3月1日。都立が第一志望でも先に入学手続きが締め切られる「滑り止め校」に、30万円前後の入学金を納めねばならない。
都立高校の授業料12万円の助成より、入学するかどうかもわからない滑り止め私立高校への入学金30万円の方が、親にとってははるかに無駄で手痛い出費なのだ。
都内には自民党や公明党を支持する宗教団体の私立高校があるから、小池知事の都知事再選を睨んだ「私立高校バラマキ」に自民党都議団と公明党都議団が乗っかったのかもしれないが、税金を無駄遣いすることはない。私立高校より先に、都立高校の入試と合格発表をしてくれるだけでいいのだ。
更にメチャクチャなのが国会で、岸田文雄総理と政府は支持率低下に開き直ったのか、また増税するという。
まず少子化対策として、政府とこども家庭庁は11月、「健康保険料に子育て支援金を上乗せする」と発表した。これが実現すれば、現役世代も高齢者も年間1万円程度、健康保険料が値上がりすることになる。
さらに与党税制調査会は12月5日、高校生(16歳~18歳)の子供がいる世帯の扶養控除について、所得税を現在の38万円から25万円、住民税は33万円から12万円に縮小する「年間34万円の増税」方針を発表した。正確に言えば、控除減額分の34万円がそのまま増税分になるわけではないが、せっかく児童手当を支給されても、ほぼプラマイゼロになってしまう。
つまり都立高校に子供を通わせる世帯は、12万円の学費助成をされたところで、困窮ぶりはなんら変わらない。
育児世帯にとっては0歳から18歳まで、すでに2010年に廃止された15歳までの「年少扶養控除」分も合わせると、子供1人あたり1300万円の控除廃止。これが「異次元の少子化対策」なのか。
1300万円もの控除を廃止されながら、わずか12万円の授業料をタダにしてもらって喜んでいるようなら、高校進学などやめて、小学校から算数をやり直した方がいい。
荒川や多摩川を渡る渡らないの不公平感を語るより、国民が一致団結すべきは「これ以上、健康保険料と税金を上げるな」と声を出し続け、増税クソメガネを総理の椅子から引きずり下ろすことだろう。
(那須優子)