元AKBの指原莉乃さんが11月21日、自身の誕生日にXに投稿した文面が物議を醸している。
〈31歳になりました 今年も今のところ結婚願望なし、卵子凍結済みで生活してます〉
〈歳を重ねることは、何とも思わないような少し嫌なような、なのですが、それ以上にやりたいことや趣味の選択肢が増えて、今とても幸せです 大人、楽しんでます!〉
今は交際相手がいないから結婚は考えていないけど、将来の結婚に備えて若いうちに卵子を採集、凍結保存した指原さんの決断を、筆者は全面支持する。筆者と同じように、ファンからは概ね好意的なリプが寄せられているが「闇を感じる」「いちいち言わなくてもいいのに」などの誹謗も書き込まれており、人工授精や不妊治療への風当たりの強さが伺い知れる。
「卵子凍結」は近年、地雷ワードになっており、2020年に女性誌「VERY」が女性のキャリア継続のため卵子凍結、代理出産を取り上げた時も大炎上。2008年に筆者が「新潮45」で卵子凍結を取り上げた当時と比べても、フェミニスト、ネトウヨ、ぼっち愉快犯…全方位から攻撃されている印象だ。
ところが指原さんの「卵子凍結」は、「卵子売買」と「人体実験」の危険を孕んでいる。韓国では2000年代に「卵子売買」事件が起きた。ソウル大学の研究者が2004年から2005年にかけて「人間の細胞をクローンし、そこからES細胞を作製することに成功した」と発表したが、これはクローン細胞などではなく、研究者の支援者や女子学生から数百個の卵子を買い取った、人道的に問題のある研究不正であることがわかった。以降、韓国では卵子売買を禁止する法律ができた。
2008年当時、筆者が取材に訪れた長野県の「諏訪マタニティクリニック」では、非常に細かい契約書を見せられた。卵子凍結で問題なのは「卵子は凍結したものの、結局結婚しなかったら、使わなかった卵子をどうするか」「夫婦で卵子と精子を凍結した後、離婚したら、卵子と精子はどうなるのか」だ。実際に離婚後に凍結した精子を無断使用して妊娠した元妻が、別れた夫に養育費を請求する裁判が日本でも起きている。
使わなかった卵子は破棄するか、実験材料にするかを本人が決める。後から希望変更も可能だ。そして卵子凍結を検討しているなら、このクリニックのように責任を持って保管している優良施設をお勧めする。他の施設に管理を丸投げしている場合、不妊治療や実験材料として卵子売買、あるいは盗まれることもあるからだ。
ましてや元AKBアイドルの場合、ヤバいファンが「指原とオレの子供が欲しい」と凍結卵子を保存施設から盗み出して自身の精子と人工授精させ、外国人女性の代理母に産ませるおぞましい「悪魔の所業」だって、今の医療技術では可能だ。
出生数が減っている日本と中国で、跡取りのいない富裕層が「卵子提供者」の顔写真の中からお気に入り女性の卵子を買う、というビジネスが成立しないとも限らない。
指原さんは「使わなかった卵子をどうするか」と悩むことなく、いつか良縁に恵まれますように。
(那須優子/医療ジャーナリスト)