表向き「キレイごと」と「正義」を語り、裏で高齢者や障害者を食い物にする輩はどこにでもいる。悪徳医師、女優の元夫、テレビ局幹部…。
日本海テレビジョン放送(鳥取市)は11月28日、53歳の経営戦略局長(11月27日付で懲戒解雇)が「24時間テレビ」(日本テレビ系)への寄付金など、計約1118万円を着服したと公表した。局によると、局長は2014年から2023年の10年間にわたり、社内の金庫で保管する「24時間テレビ」に寄せられた募金の一部を持ち出し、計約265万円を自身の口座へ入金。さらに2014年から2021年にも経理処理を偽装するなどし、同局の資金となる約854万円を着服したという。
11月9日、日本海テレビが税務調査を受けると知った局長は発覚を恐れ、着服の事実を局に申告。これまでに約448万円を弁済しているという。局サイドの調査に「2014年当時、親族のためにまとまった金を用立てる必要があった。着服しても発覚しにくいお金があり、思いついた」と話しているというが、局員との飲食やパチンコなどの遊興費にも使ったとみられる。
そこで疑問が。経営戦略局長は自ら経理処理を偽装していたのに、なぜ「税務調査でバレる」と観念したのか、だ。
その疑問に答えたのが、11月29日に「めざまし8」(フジテレビ系)にコメンテーターとして出演した元東京地検特捜部副部長、若狭勝氏の「一般論」だった。
若狭氏は過去の着服事件になぞらえて、一般的な着服事件の被害相場額は当初発覚した額の「5倍、10倍くらいのことが多い」と言及したのだ。
「24時間テレビ」の募金はクレジットカードやスマホによる決済方法もあるものの、全国各地のテレビ局の特設コーナーに、まだ疑うことを知らない子供がお年玉を丸ごと貯めた「貯金箱」を持ってきたり、ダウン症者が自ら障害者施設で働いた数カ月分の給料袋ごと持ってきたりもする。小銭から札まで現金でやり取りされると「テレビ局が受け取った寄付総額」は、その場で誰も把握できない。視聴者がテレビ局に持参した金封を、誰も見ていない間に関係者がポケットに入れてしまうことも、不可能ではないだろう。
クビになった局長が着服したのは年間数十万円ではなく、その5倍、10倍だから、当局が大金の流れを不審に思い、税務調査に入ったと考えるのが妥当だろう。
コロナ禍で障害者施設での集団感染や職員が感染した際には、障害者を世話している看護師や福祉職には休業補償すらなかった。障害者とその親からも、看護師や福祉職の生活を守る休業補償を求める声を上げてもらえなかった。
結果、コロナ関連の生活資金貸付制度で筆者自身、今も返済している。障害者や老人のために数十万円から百万円単位の「タダ働き」「自己犠牲」を強いられ、今も借金を返している当事者からすれば、チャリティーを叫びながら芸能人が高額ギャラをもらう「24時間テレビ」の存在自体、ハラワタが煮えくり返るような偽善コンテンツにしか見えない。ましてやテレビ局幹部による募金着服。これでも日本テレビは来年も、漫然と「24時間テレビ」を続けるつもりなのだろうか。
今年8月26日から27日に放送された「24時間テレビ 46」の寄付金総額は、8億2100万8847円。46年間の寄付金累計額は433億64万3146円だと日本テレビは10月に発表しているが、記録に残らない「46年分の着服金総額」はいくらに上るのか。着服した悪いヤツら本人にもわからないだろう。
(那須優子/医療ジャーナリスト)