不死鳥(フェニックス)は蘇らず。11月28日の学内会議でようやく、日本大学アメリカンフットボール部の廃部が決まった。
「真面目にやってきた学生が可哀想」という意見も散見されるが、悪質危険タックル問題やコーチの性ビデオ出演など、過去に数々の不祥事を起こしてきたアメフト部の部員の多くが「授業料免除の特待生扱い」という事実を知っても、同情する人はいるだろうか。
以前にも触れたが、全国各地の日本大学付属校にはアメフト部やその他の運動部OBの教員が多く配置されており、
「2018年の危険タックル事件後も、聞いてもいないのに『自分は日大アメフト部出身で』と自慢する教員がいました。一歩間違えば相手選手は半身不随になってもおかしくないのに、この人達は何も反省していないんだなと思いました」
子供を付属校に通わせる保護者は、アキレ返りながらそう話すのだった。
危険タックルが起きたのは西のアメフト名門校、関西学院大学との定期戦でのこと。記録が残る公式戦でヒートアップした結果の危険行為ではない。東西名門校同士の交流を深める試合で「相手チームのスター選手をケガさせる」という悪質な指示が飛ぶことも、それに従う選手がいることも、意味がわからない。
あの時点で、日大アメフト部は廃部すべきだった。不祥事を起こした部の部員が授業料免除で、新型コロナで満足な授業も受けられず、さらに就職活動のタイミングで薬物事件に足を引っ張られた4年生は授業料を全額納めろとは、フザけた話だ。8月の薬物事件会見からたった5日で活動再開させる大甘対応もおかしい。
なぜ日大はここまで、アメフト部に肩入れしたのか。大学関係者に話を聞くと、
「アメフト部は知名度も人気もあり、大学の象徴であることも当然、影響しました。付属校にアメフト部出身教員が配置されるなど、学内人事でも力を持っているし、日大は体育会OB組織が強固なんです。さらに今から15年以上前、アメフト部と相撲部、田中英寿前理事長は怪文書が飛び交った大学総長選で、日本の医学界の重鎮たる医学部名誉教授の瀬在幸安氏を第10代総長に担ぎ上げ、医学部とそのOBを取り込んでしまった。これが決定的でした」
あまりにベタな、組織の「筋肉バカVSエリート」の力の均衡が崩れてしまったのだ。
「今でこそ林真理子理事長と法学部出身の沢田副学長の泥試合が注目されていますが、理事会に3つある副学長の椅子のひとつは、医学部の指定席。林理事長の推薦で、日大理事に東大医学部出身で精神科医、作家の和田秀樹氏が就任しましたが、今後は体育会が後ろ盾の医学部と、法学部、外部理事の間でさらにひと悶着あるかもしれません」(前出・大学関係者)
映画にもなった名物監督、篠竹幹夫氏が現役の指導者だった頃、薬物事件の舞台となった合宿所を訪れると、篠竹氏は手に竹刀を携えながらも人懐こい笑顔で「ちゃんこでも食うか」と声をかけてくれた。部員達は底抜けに明るく、好青年ばかりだった。合宿所というのは功罪あれど、篠竹氏みたいな鬼監督が住み込みで睨みを利かせていないと、舵取りは難しいのだろう。
今になって、ちゃんこを食べたのは田中元理事長のちゃんこ料理屋だったと思い出したが、日大フェニックスも鶏の出汁がたっぷり効いたちゃんこ鍋も、もうない。
(那須優子)