軍事偵察衛星「万里鏡1号」の打ち上げに成功したとされる北朝鮮。金正恩総書記は成功の知らせを受け、「これで万里を見下ろす『目』と、万里を叩く『拳』の両方を、我々は手に入れた」と、歓喜の声を上げたと伝えられる。
北朝鮮の労働新聞によれば、偵察衛星が撮影したアメリカのホワイトハウスや国防総省の衛星画像は即刻、金正恩氏に報告され、実にご満悦の様子だったという。
近年、やれミサイルだ、人工衛星だ、と国を挙げて技術革新をアピールしている北朝鮮だが、実が2000年代までは、国家が先導して、金一族のオカルト的超能力を国民に信じ込ませていた時期がある。その人類を超越した能力こそが、金一族に生まれながらに備わっているとされる、テレポーテーション能力、つまり瞬間移動できる能力だと言われてきた。超常現象研究家が解説する。
「これはテレキネシスと呼ばれる念動力や、テレパシーなどと並ぶ超能力で、空間を飛び越え、瞬時に目的地から別の目的地に物体を転送したり、自分自身が移動する能力のことです。空間を飛び越えているため、その間にいかなる障害物があっても、問題なく移動できる。実は北朝鮮では建国以降、長年にわたり『将軍様は縮地法(テレポーテーション)を使うことができる』という伝説が語り継がれています。なんと、それが2000年代に入ってもなお、彼らを神格化するために用いられてきたというのです」
金一族が使うテレポーテーション能力は「Chukjibop」と呼ばれ、地球を折り畳む(縮める)ことで場所と場所を高速移動する。それによって、攻撃する相手からは、こちらが消えてしまったかのように見えるのだという。
「北朝鮮には、初代最高指導者の金日成主席が大日本帝国の兵士と戦った際、この技を使って日本軍兵士を殲滅したといいます。これ以降、一族が『Chukjibop』を使えることは、国民なら誰もが知るようになった。なにしろ、これらの情報を日々、垂れ流していたのが労働新聞などの国営メディアだというから、驚くばかりですよ」(前出・超常現象研究家)
しかし、さすがに金正恩氏が2011年に第3代最高指導者の地位に就いてからは、北朝鮮の神話は徐々に現実味のあるものに変化している。その結果、労働新聞も2020年5月20日付の報道で初めて「実際には、人は空間を折り畳んで消失したり、再び現れたりすることができません」と記述。この能力の存在を否定したことが報じられた。
それにしても、国を挙げて真面目に「瞬間移動」を肯定したとは…。改めて独裁国家の恐ろしさを痛感するのだった。
(ジョン・ドゥ)