日本大学アメリカンフットボール部の違法薬物事件などへの対応をめぐり、12月4日に林真理子理事長が大学本部で開いた記者会見は、日大執行部内の混乱ぶりと迷走ぶりを改めて世に晒す、実に皮肉な結果となった。
「学生と保護者、卒業生をはじめとして、関係者の皆様方に大変なご心配とご迷惑をおかけしましたことを、改めて深くお詫び申し上げます」
会見の冒頭、こう切り出して深々と頭を下げた林理事長は、スポーツ競技委員会で決定されたアメフト部の「廃部」が理事会で「継続審議」になった一件について問われると、
「まだ継続審議中でございますので、私の考えはご容赦いただきたい」
などと述べてお茶を濁した。さらに、第三者委員会による辞任勧告を受け入れた沢田康広副学長が、林理事長を相手取って起こした「パワハラ訴訟」についても、
「係争中でありますので、お答えすることはできません。ここで言質を取られるのは…ご容赦いただきたい」
どうにも歯切れの悪い説明に終始したのである。今後の対応方針を検討する会議で議長を務め、会見に同席していた久保利英明弁護士からは「(沢田副学長は)ちょっと異常な発想をされる方」との発言が飛び出すなど、執行部内の対立も浮き彫りになった。
そんな中、林理事長が唯一、明確な意思を表明したのが、自身の進退問題だった。記者から「辞任するつもりはあるのか」と問われると「まだ改革途上」を理由に理事長辞任をハッキリと否定した上で、次のような捨てゼリフまで吐いてみせたのである。
「(辞任すべきとの記者の意見については)貴重なご意見として承っておきます」
実は11月30日に日大側から改善計画などを記した報告書を受け取った文科省は、この日の会見を待たずして、年内にも日大の改善への取り組みをチェックする特別チームを省内に発足させることを決定している。個別の私立大学の運営に文科省が介入するのは、異例中の異例と言える事態だ。その舞台裏に詳しい大学本部幹部が明かす。
「林理事長が最も恐れているのは、文科省によって理事長職を奪われることです。だから、必死になってしがみつこうとする。『改革途上』という言葉の裏には、手に入れた理事長職と約2400万円の年俸を手放したくない、というホンネも見え隠れしています。3年連続でストップしている私学助成金の問題を解決に導くためにも、この際、文科省が送り込む人物を新理事長に迎えた方が、日大の再生は早いかもしれませんが…」
学生も保護者も含めて、日大の関係者は「もうウンザリ」なのだ。
(石森巌)