「非課税世帯でも、住民税は払っていただきます」
看護師とジャーナリスト稼業で生計を立てているわが家に「赤紙」がやってきた。デルタ株が猛威をふるった21年から22年、自分や家族が高熱を出してもPCR検査が受けられず、何度も就業自粛を余儀なくされた結果、年間収入が200万円にまで落ち込んだのだ。
PCR検査で陽性が判明すれば、健康保険組合から手当金、医療保険から保険金が支給される。ところが、疫学調査対象ではないからと、保健所からはPCR検査を断られた。
たとえコロナ患者を世話した看護師がPCR検査で陽性となり10日間休職しても、休業補償をしない医療法人がほとんど。ボーナスで補填したくても、コロナによる減収を口実に、ボーナス支給なしか大幅減額。こんなもんやってられるか、と怒れる看護師が大量離職した結果、現在進行中のコロナ第7波でも、看護師不足から医療は絶賛崩壊中である。
そんな状況ゆえ、恥ずかしながら非課税世帯になったのだが、冒頭に書いた通り、住民税支払いを催促する赤紙が届いた。「ウチは非課税世帯ですけど」と役所の納税担当者に恐る恐る聞いてみる。すると…。
「年収200万円あるんでしょ! 住民税、払いなさい。さもなければ預金口座と生命保険を差し押さえます」
との返答だった。反社会勢力より外道な取り立てだ。
給与収入あるいはパートやアルバイトで年間45万円以上の収入を得た場合、非課税世帯でも住民税が課されるのだという。国税庁の職員に、年収45万円でどうやって暮らせばいいのか、教えてもらいたいものだ(だから給付金詐欺をするのか)。
参院選前のバラマキ、今年6月中に貧困育児世帯に給付金を支給したという政府発表なんて「大ウソ」。確かに非課税貧困世帯の我が家にも5万円は振り込まれたが、同時に住民税の督促がきて、5万円になけなしの貯金3万円まで足して、住民税として上納した。これはパート、アルバイトをして、爪に火を灯すように生活している貧困年金生活者でも同様だ。
もしかすると、育児世帯は少子化対策でいろいろとカネをもらっている、と誤解している人もいるかもしれない。子ども手当、給付金は子供のために使えない。税金や住宅ローンの足しになって消える。教育費無償化にも、所得制限が設けられている。
それは今年10月から子ども手当が廃止となる、世帯年収1200万円の育児世帯も同じだろう。一見高額所得者に見える年収1200万円世帯の手取り月額収入は、約60万円。自宅賃料や住宅ローンに加えて子供2人を塾や私学に通わせると、生活費は10万円も残らない。
この国で健全で文化的な生活を送れるのは、コロナによる減収や物価高の不安に悩むこともなければ、税の取り立てもない生活保護世帯と、ごく一部の富裕層、政治家、皇族だけかもしれない。
この参院選ではロクな候補者がおらず、支持したい政党もなく、投票する気すら失せたのは事実だが、真面目に働き納税する者がバカを見る世の中を、少しは変えたい。日曜日には投票に行こう。
(那須優子/医療ジャーナリスト)