山手線の駅で最も読むのが難しい駅とも言われる「鶯谷駅」。上野駅と日暮里駅の間にあるこの駅は、都民であっても利用する機会が少ない人が多いのだろう。
JR東日本が発表した2022年度の1日平均の乗車人員の数は2万1112人。山手線の駅としては高輪ゲートウェイ駅(9247人)に次ぐ少なさ。高輪ゲートウェイ駅が新たに開業した駅であることを考えれば、実質ワースト1と言っていい。
そんな利用者数に合わせ、駅舎は控えめ。北口は駅員が常駐しておらず、南口は跨線橋と駅舎がいっしょになった橋上駅舎。改札の通り道はどちらも4つと、山手線の駅とは思えない少なさだ。
では駅前に何もないかと言えばそんなことはない。北口の周辺には、男女が逢瀬を楽しむために利用するホテルが多数ある。きらびやかなネオンの建物が鶯谷駅の顔なのだ。
夜になれば2人きりになりたい男女が次々と駅から出てくる。一方、昼間はまた別の層の客が行き交い、それなりに賑わっているようにも見える。
「昼間はホテルでマッサージサービスをする女性と、客の男性が待ち合わせをしているのをよく見かけます。昼も夜も時間に関係なく、男女が利用しているわけです」(鉄道ライター)
もう一つ、鶯谷駅の顔になっているのが居酒屋だ。ホテルの合間にリーズナブルな店が軒を連ね、いつも客であふれている。その中には呑兵衛によく知られている人気店もあるという。
「北口駅前にある『信濃路』はメニューが多くて値段も安く、酒飲みにとっては天国のような店です(笑)。また朝7時から夜中までオープンしていることでも有名。以前は24時間営業だったので、これでも営業時間は短くなったんです」(前出・鉄道ライター)
難読駅の周辺には24時間眠らない街があった。
(海野久泰)