本サイトが12月1日に公開した記事では、首都・東京のベッドタウンをクマがウロつき始めるという未曽有の事態が切迫していること、中でも高尾山系に近い八王子市や町田市などの市街地や住宅街での出没が危惧されること、などを指摘した。
その懸念が早くも現実のものとなった。12月7日の夕方、八王子市役所の裏手を流れる浅川沿いで、ツキノワグマ(本州以南に棲息)とみられる個体が目撃されたのだ。
目撃場所は八王子市役所の北西約500メートルに位置するグラウンド。市民による目撃通報を受け、警視庁の八王子署員が現場に駆けつけると、目撃された個体はすでに姿をくらましていた。ところが通報した市民がスマートフォンで撮影した動画にその姿が映っており、ツキノワグマであることが確認された。
現場周辺には住宅街が広がっており、学校や店舗なども点在していることから、市が住民や学校関係者などに注意を呼びかける事態に発展している。
では今後、首都・東京におけるツキノワグマの出没エリアは、どこまでエスカレートしていくのか。北海道のヒグマも含めたクマの生態に詳しい動物学者が指摘する。
「問題は、今回の目撃現場が浅川沿いにあるグラウンドだった点です。都市部の河川敷にクマが出没するケースは多く、北海道札幌市の中心部を流れる豊平川の河川敷でも、ヒグマの目撃情報が相次いでいる。その上でさらに注目すべきは、浅川は多摩川の支流であり、多摩川は東京都と神奈川県の境を南下して東京湾に至るという点なのです」
実はヒグマも含めて、クマはたった1日で数十キロ、場合によっては60キロ以上、移動することがあると言われている。動物学者が続ける。
「例えば八王子市役所の近くで目撃された個体が、河川敷に身を隠して残飯などを漁りながら、浅川から多摩川を南下していくという事態は十分に考えられる。しかも八王子や町田などのベッドタウンに足を踏み入れている個体は、目撃されていない個体も含めれば、すでに相当数に上っているはずです。多摩川に隣接する世田谷区や大田区をはじめとして、東京23区がアーバンベアの脅威に晒されるのも時間の問題でしょう」
今年は冬眠しないクマの激増が懸念されている。東京23区も安全地帯ではないのだ。
(石森巌)