今年の秋は日本全国でクマ(北海道のヒグマ、本州以南のツキノワグマ)による人身被害が相次いだ。そんな中、過去最多となる被害報告数が更新され続けている今年は12月に入っても、さらにはエサの蓄え不足により、真冬になっても冬眠しないクマが市街地や住宅街に出没し続ける危険性が指摘されている。
この点は首都・東京といえども、例外ではない。それもツキノワグマの棲息域として知られる奥多摩地域の話ではなく、八王子市や町田市といった市街地でのことだというから、これは穏やかではない。
事実、10月18日には町田市の青少年施設「ネイチャーファクトリー東京町田」でツキノワグマが初めて目撃され、市関係者の間に衝撃が走った。クマの生態に詳しい動物学者が指摘する。
「ネイチャーファクトリー東京町田は、山奥にある施設ではありません。付近には法政大学多摩キャンパスや拓殖大学八王子国際キャンパスなどの大学施設、東京医科大学八王子医療センターなどがあり、周辺にはベッドタウンも広がっている。目撃されたツキノワグマは隣接地域の高尾山などから移動してきた個体だと思われますが、実際にはすでに相当数の個体がこの地域に足を踏み入れていると考えておくべきでしょう」
実は八王子屈指の観光名所として知られる高尾山界隈では近年、ツキノワグマの目撃情報が急増しているエリアなのだ。しかもケーブルカー乗り場のある高尾山口のわずか500メートル先には、市街地や住宅街が広がっている。動物学者が続ける。
「町田や八王子などのベッドタウンに続々とツキノワグマが出没するのは、もはや時間の問題と言っていいでしょう。出没件数が増えれば当然ながら、人身被害も起きる。史上最多の頻度でクマによる人身被害が報告されている今年は、特に要注意です。師走を迎えても、真冬を迎えても、警戒を怠ってはなりません。首都・東京も安全ではないのです」
本サイトが11月17日に配信した記事でも指摘したように、クマの行動範囲は「オスで約100平方キロ」「メスで約40平方キロ」にも及ぶ。数キロ離れた山中から市街地や住宅街に繰り出すことなど、クマにとっては朝メシ前なのだ。
(石森巌)