コロナ禍に一大ブームを巻き起こした唐揚げ専門店の倒産が急増している。唐揚げはニチレイフーズが調査を行った「好きなおかずランキング2023」で4年連続一位を獲得しているが、それでも倒産が相次ぐ原因には「ブーム便乗店」の存在があり、すでに次は「ある業態」が狙われているという。
帝国データバンクが発表した「『唐揚げ店』倒産動向」によると、2023年1月~11月までの唐揚げ店の倒産は22件で前年のおよそ7倍であり、過去最多を大きく上回っていることが分かった。その原因として、ライバル店の急増による競争激化や節約志向によるコスパの低下、材料費の高騰が挙げられており、水面下の閉店などを含めれば「23年はより多くの唐揚げ店が市場から淘汰された」と分析している。
「唐揚げ専門店が相次いで閉店・倒産している背景にはもう1つ、ブームに便乗する店が数多く登場したことも挙げられます。ブーム便乗店は、タピオカや高級食パンなど話題になったグルメの店を出店して一時的に儲け、ブームが去ったらすぐに撤退するという戦略を取っている。特に唐揚げ専門店はコロナ禍の事業再構築補助金などの交付が受けられたため、雨後の筍のように急増し、利益だけが刈り取られて、あっという間に消えていったのです」(経営コンサルタント)
このブーム便乗店の存在には大きな問題がある。そもそもそのグルメを専門に扱っているわけではなく、一時的に出店するためメニューのクオリティ自体がかなり低い場合が多い。そのため、ブームのピーク時に大量に発生すると、その業界全体の評価を下げてしまい、ブームの終焉を早めるという厄介な特性も持っているのだ。
「そんなブーム便乗店は唐揚げ専門店から撤退して、次のターゲットとしておにぎり専門店に狙いを定めていると言われています。おにぎり専門店は省スペースで調理器具も最小で済み、調理技術もそれほど必要としませんから、本格的にブームに火が付いたら唐揚げ専門店以上に参入が激増する可能性もある。ただ、おにぎりは家でも作れる上に、味の差別化が難しいメニューでもあるので、唐揚げよりももっと早いテンポでブームにとどめを刺してしまう可能性もあります」(前出・経営コンサルタント)
2024年、「本物」のおにぎり専門店は残って欲しいものだ。
(小林洋三)