発生から36年の歳月が経過するも、現代の科学をもってして、いまだそれが真実なのかフェイクなのかさえ解き明かされていない、謎のUFO騒動がある。イギリスで起きた「イルクレーの宇宙人」事件だ。
事件発生は1987年12月1日。イギリス・ヨークシャー州のイルクレー・ムーアという町に住む元警察官の男性が義父の家に向かうため、丘に続く道を進んでいた時のことだ。
当時、この丘付近では光を放つ謎の物体の目撃談が続出していたことで、彼は高感度フィルムをセットしたカメラを首からブラ下げ、急な霧が出ても道に迷わぬよう、方位磁石も持参していた。
ところが男性があと少しで丘の頂上に差し掛かろうとした瞬間、霧の中に奇妙な生き物がいることに気付く。とっさにシャッターを切ると、その生物を追いかけた。しかし、それは目の前に浮かんだ光を放つドーム型UFOにスーッと乗り込むと、UFOは地鳴りのような音を上げながら、空へと飛び去っていったという。
興奮冷めやらぬ男性は写真を現像するため、最も近い村を目指して歩き出したが、方位磁石は北と南が真逆を指したまま。なんとか村に辿り着き時計を確認すると、今朝合わせた時刻が1時間遅れていた。UFO研究家が解説する。
「写真に写っていたのは、大きい目と耳を持ち、手が異様に長く、緑色の肌をした、見たこともない生物でした。男性は野生動物写真の専門家に見せた後、コダックの研究所に送り、それが加工されていない映像であるとのお墨付きを得て、アメリカの光学物理学者に画質向上と分析を依頼。しかし、トリックであるとの証明はできないが、宇宙人の写真とも証明できないという、曖昧な回答を得るにとどまったのです」
ところが、事件はこれだけで終わらなかった。UFO研究家が続ける。
「その後、有名な心理学者が男性に逆光睡眠療法を行ったところ、その証言から、どうも男性がUFOの中で生体検査のようなことをされていた可能性が出てきた。その記憶は完全にかき消されていたようなんです。それが1時間遅れの時計の謎ではないかと…」
事件から2週間後の夜、男性のもとにイギリス国防省を名乗る全身黒服の男2人がやって来たことも判明。写真について質問されて「友人の家に置いてある」と答えると、何も聞かずそのまま帰って行ったという。
男性は「提示された身分証明書は本物だったように見えた」と語っている。UFO目撃に記憶消去、そして全身黒服男の訪問。謎に満ちた「イルクレーの宇宙人」事件は、謎のまま葬り去られてしまうのか。
(ジョン・ドゥ)