旧田中角栄邸が1月8日に全焼した火事で、警視庁などは9日午前9時過ぎから、火元の建物の実況見分を始めた。
東京文京区目白台の高級住宅街に火柱が立ったのは、8日午後3時20分頃。かつて田中角栄元総理が暮らした自宅から出火し、消防車等の緊急車両27台が出動、6時間以上経過した午後10時前に、ようやく消し止められた。2階建ての住宅など800平方メートルが全焼した。隣接する日本女子大学の学生や、当時、敷地内にいた娘の田中真紀子元外務相と夫で元防衛相の直紀氏にケガはなかった。警視庁によれば、出火時に建物の中にいた真紀子氏は「線香をあげていた」と説明しているという。
ここで気がかりなのは、真紀子氏の「体調」だ。
今回の火事はまだ実況検分中であり、火元は明らかになっていない。その上での一般論だが「線香が原因の火事」は、認知機能が落ちた高齢者宅で、お彼岸やお盆の時期に頻発する。東京消防庁や名古屋市消防本部では、お彼岸やお盆の時期に墓地や仏壇周辺で「線香が火元の火事」が消防管内で数件起きると注意喚起している。角栄氏の地元、新潟県内でも消防署職員が毎年のように高齢者住宅を個別訪問し、「仏壇のろうそくと線香の消し忘れに注意するように」と指導しているほどだ。
消防署職員が高齢者相手に「仏壇の線香」を消すようピンポイントで指導しているのは、線香は炎の出ない「無炎燃焼」だから。線香の燃焼部分は炎は上がらないものの、400度から800度の高温になっており、倒れたり折れたりして仏壇に燃え広がった際も炎と煙が出にくく、失火に気が付きにくい。線香をあげた高齢者は線香に火をつけたままであることを忘れていて、仏壇から家具やカーテンに燃え広がったのに気付いた頃には火の勢いがすさまじく、逃げ遅れる恐れがある。
だから最近では僧侶も線香は横置きにするし、若い人は拝んだ後にろうそくと線香の火をすぐ消すか、火を使わないLED製品を使う。ところが高齢者ほど線香を途中で折ったり、途中で消すことを「縁起が悪い」と嫌がるため、失火に繋がりやすいのだ。
能登半島地震のような突然の直下型地震で、線香をつけっぱなしにしているところに仏壇や家具が倒れたり、木造住宅の屋根ごと落ちてくる危険を考えたら「線香を消すことがバチ当たり」などと言っていられない。政治部デスクが話す。
「真紀子氏は火事からちょうど1カ月前の12月8日、東京・永田町の国会内で夫・直紀氏と会見し、『安倍内閣ができた頃から、これはちょっと日本が危ない方向に行くかもしれないし、国際情勢もたいへん厳しくなってくる』と切り出しました。派閥から夏と冬に、白い封筒にまるまる百万円の束が入った『氷代』『モチ代』が配られるという生々しい体験談も暴露した。内閣官房機密費や派閥の手当について言及したのです。真紀子氏がいよいよ政界復帰かと地元選挙区は盛り上がりましたが、これといった新しい話題もなく、永田町の反応は冷ややかです。今回の火事が真紀子氏の政治生命にどう影響するのか、心配されます」
79歳の真紀子氏と83歳の直紀氏がケガなく避難できたことは、不幸中の幸いと言えるだろう。
(那須優子)