野村氏は楽天の名誉監督だった10年5月に、解離性大動脈瘤と診断され、緊急入院した経験がある。高血圧に過労が重なったことも要因とされた。この時も、トークショーなど入っていた仕事を軒並みキャンセルし、数カ月間、静養に努めている。
事実、講演会やイベントなどの超多忙なスケジュールに、野村氏は悲鳴を上げていたという。
「午前中に北海道、午後は九州、という超ハードな時もありました。トランジットで空港を走っているノムさんを見たことがあります。冗談半分で『このままではサッチーに殺されるわ(笑)』と、次々に仕事を入れる沙知代夫人への不満を漏らしていました」(前出・遊軍記者)
そういえば今年6月、山形での講演会を聞いた本誌記者も、野村氏がスタッフの肩につかまり、足を引きずってつらそうに歩く姿を目撃している。
「もちろん膝が痛いせいもありますが、心臓が悪いからという理由も多分にあるようです」(スポーツ紙デスク)
野村氏は楽天監督時代、高血圧対策のため、特製のお茶をペットボトルに入れて持ち歩いていた。ルイボス茶など、いろんなお茶がブレンドされているものだ。そうした健康への気遣いも、激務には勝てなかったということなのか。
遡れば89年、ヤクルト監督に就任した直後の秋季キャンプ中にも、野村氏は心臓疾患の疑いで長期入院。スポーツ紙デスクが言う。
「この時、心臓が一度止まったと言われ、死亡説まで流れました。実際、マスコミが何社か、病院に確認の取材に走ったほどです。幸い、一命を取り留めて復帰しましたが、その後も心臓の薬を飲んでいたようで、『いい薬があるんだよ。でも髪の毛が抜けるんや』とボヤいていました」
心臓の不安は以前からあったのである。
さて、10月中旬に検査入院した野村氏について、球界関係者は、
「命に別状はないというか、そこまで重病ではないと聞いています」
としながらも、
「沙知代さんや克則氏ら家族が医師に呼ばれ、説明を受けたのだ、と。手術の可能性も伝えられたようです。と同時に、野村邸とその裏にある克則邸を通路を作ってつなげた、というまことしやかな噂まで流れました。退院後にノムさんを支えるべく、行き来しやすいように、と‥‥」
実際は、克則邸裏の勝手口のようなドアから野村邸へと行ける、ということのようだが、そんな噂が出回るほど緊迫した状況だった、との見方もできるのだ。
野村氏のマネジメント事務所に、入院中の様子を聞いてみた。
──今、どんな状態なのか。
「入院はしていますが、詳しいことは把握していません」
──退院予定はいつなのか。
「わかりません」
──やはり心臓疾患なのか。
「そのへんもちょっと‥‥」
どうにも歯切れが悪いのだ。病院関係者が言う。
「11月中旬頃には一度退院して自宅に戻っています。その際、20キロ近くも激ヤセしていたと‥‥。そして手術を受けるため、11月27日に再入院しました」
激ヤセ、退院、手術。解離性大動脈瘤の手術とはどんなものなのか。山梨医大の田村康二名誉教授(内科医)が解説する。
「普通は大動脈瘤が破裂すると、半数ほどは即死します。コブができた個所が腹部か胸部かによりますが、胸部にできれば執刀医が12時間連続して手術室にいなければいけないような大手術。剥離したコブを切り取って、人工血管を入れます。これは心臓手術の中でも最も難しい。腹部は胸部に比べて(症状は)軽いですが、それでも大手術であることに変わりはありません」