次に村上氏は、意外な持ち出し品を挙げる。
「それはお薬手帳です。持病のある方は常備薬の持ち出しに意識を回せても、こちらは案外忘れがち。避難所生活では数日で医師が派遣され、診察所が開設されます。そこで自分が何の薬を飲んでいるか正確に伝えられる人は少ない。『赤いシートの薬』と言われても医師はわからないわけです」
手元の薬を持ち出しても、避難生活が長引けば間違いなく足りなくなる。だが、補充については診察所があればそこまで心配する必要はない。むしろ医師の負担を減らし、自身がその後もスムーズに診察を受けるためにも、お薬手帳が必要となる。
「避難所では体調が悪化する人が多く、環境が変わって眠れなくなり、睡眠導入剤を求める人も続出します。いずれの場合も、他の薬との飲み合わせがありますから、自分が飲む薬をはっきり認識しておくべきでしょう」(村上氏)
今は紙の手帳だけではなく、お薬手帳のアプリもあるので、心配な人はそちらもスマホにインストールしておこう。
普段使いのカバンを防災仕様にする上で、村上氏が最後に推奨するのは、市販の「赤ちゃんのおしりふき」だ。
「被災後は数日間風呂に入れない状態が続きます。ですがトイレには行くわけで。汚い話になりますが、紙で拭いているだけでは、どうしても便が残ってかゆくなったりしてしまうので、これが役に立つんです。アルコール仕様のウェットティッシュだと、長期間使い続けたらかぶれてしまうかもしれませんからね」
赤子に配慮した商品であれば、体に害はない、ということだ。これもポケットティッシュサイズで売られており、携帯しておきたい。
避難が短期間で済めばいいが、倒壊などで自宅には帰れず、避難所での共同生活にストレスを感じ、一定期間、車中泊を選択する避難住民もいるだろう。現に今回の地震でも車中泊の被災者が目立った。仮に自分が被災し、マイカー生活を選んだ場合はどうすればいいのか。村上氏に解説してもらおう。
「常に水や簡易食糧を積んでおくほか、お薬手帳のコピーやモバイルバッテリーの予備を車のダッシュボードに入れておくといいでしょう。連続して車中泊する場合、いちばん注意しなければいけないのがエコノミークラス症候群です。たまに外に出て屈伸したり、運動するよう心がけてください。寝る時はシートを思い切り倒して、脚をダッシュボードの上に投げ出すなど、血行不良対策を意識すること。また、被災状況によって量が限られるかもしれませんが、入手できれば水は摂れるだけ摂った方がいいですね。これは車中泊でなくても同様です」
天災はいつ降りかかるかわからない。命を守るため、以上のことを肝に銘じておこう。