自民党派閥の政治資金パーティー裏金事件をめぐり、昨年12月に参院幹事長を辞任した清和政策研究会(安倍派)の世耕弘成氏。パーティー収入の一部を政治資金収支報告書に記載しなかったとする政治資金規正法違反容疑で告発されたものの、東京地検特捜部は不起訴とする方針だと一斉に報じられている。これを受けて、空席のままの参院幹事長ポストへの復帰に、世耕氏が意欲を見せているとの情報が参院自民党内で流れている。
世耕氏と同時期に辞任した安倍派の萩生田光一前政調会長、高木毅前国対委員長の後任人事は昨年末に行われたが、参院幹事長の空席は1カ月も続く異例の事態となっている。
世耕氏は参院幹事長を辞任した後も、参院の清和会の集まりである「清風会」の会長ポストを手放していない。最近もパーティー券問題をめぐる対応について「清風会」メンバーからの相談に乗ったりするなど、復権に向けた準備に余念がない。
参院幹事長ポストが空席だった背景には、派閥の事情もある。関口昌一参院議員会長は平成研究会(茂木派)所属。石井準一参院議員運営委員長はこのポストに強い意欲があるとみられているが、関口氏と同じ茂木派なので、同じ派閥で会長、幹事長を占めるのは望ましくないとの声が多い。松山政司参院議員副会長も候補に挙がるが、岸田文雄首相率いる宏池会出身のため、最大派閥の安倍派に配慮して自ら手を挙げようとしない。つまり、膠着状態が続いているのだ。
世耕氏とすれば、不起訴で嫌疑は晴れるとして、参院幹事長に復帰する障害はないと考えているようだ。
世耕氏は理事長を務める近畿大学の教職員組合から「本学の社会的評価の低下を招く」として辞任を要求されていたが、大学側は退ける決定をした。不起訴によって世耕氏が一層、強気の対応に出てくる可能性もある。
ただ、疑惑を受けて追及されたのに、わずか1カ月で元のポストに復帰することへの批判は強い。世耕氏は政治資金パーティー問題への自身の関与について説明したこともないが、複数の議員によると、特捜部は世耕氏の役割に重大な関心を示していたという。
安倍派では参院選の年に開いたパーティーについて、改選を迎えた参院議員の販売ノルマを免除し、販売分を全額償還(キックバック)していたが、これを主導したのが世耕氏とみられているからだ。
グレーな男の復権をすんなり認めるのか。参院自民党が「良識の府」としてどのような判断をするか、注目される。
(喜多長夫/政治ジャーナリスト)