岸田政権への「中間評価」ともいえる衆参5補欠選挙で、自民党は3議席から4議席と議席を増やした。激戦となった衆院千葉5区、参院大分選挙区で勝利し、党内からは安堵の声が漏れるが、唯一、蚊帳の外となったのが、維新候補に敗北した衆院和歌山1区だ。しかも、和歌山は二階俊博元幹事長、世耕弘成参院幹事長という大物議員の地元。この2人は世耕氏の衆院への転出をめぐり、普段は犬猿の仲だが、今回は共に責任を問われている。
「そもそも鶴保庸介元沖縄北方担当相を出しておけば、こんなことにならなかった。二階、世耕両氏が評判の悪い門博文候補を出した責任は重い」
と憤るのは、自民党選対関係者だ。
和歌山選挙区選出の鶴保氏は、当初から鞍替えに意欲を示していたが、それに異論を唱えて門氏を支持したのが、世耕氏と同じ和歌山選出の石田真敏元総務相だった。自民党選対関係者は、こんな見方をする。
「衆院への鞍替えを目指していた世耕氏が手を挙げればよかったが、本人は地元の和歌山2区にこだわった。ただ、鶴保氏に鞍替えで先を越されるのはおもしろくないので、門氏を推したのでは」
鶴保、門両氏ともに二階派に所属しているため、県連会長の二階氏としても、どちらかを推すわけにいかない。二階氏は最終的に門氏を選んだ理由について「(県連所属国会議員の)力強い後押しだ」と述べ、世耕氏らの門氏支持が決め手となったと説明した。
だが、門氏の評判の悪さは、世耕氏もよく知っているところ。同じ二階派に所属していた中川郁子衆院議員との路上キス不貞スキャンダルが週刊誌に報じられるなど、素行の悪さで有名だったからだ。選挙戦でも候補者とは思えないふてぶてしい態度だと、世耕氏は門氏に対して不満を示していた。
「世耕氏とすれば勝つにこしたことはないが、負けても二階氏の威信が低下するだけと、割り切っていたのではないか」(前出・自民党選対関係者)
ただ、岸田文雄首相に対する襲撃事件が起き、県連が結束したにもかかわらず、公認候補を当選させることができなかったことは、世耕氏の威信も低下する事態となった。
この敗北により、世耕氏の鞍替えにも影響が出ることが予想される。