自民党の二階俊博元幹事長と世耕弘成参院幹事長の地元は、ともに和歌山県。今、現地でのバトルが、過熱の一途を辿っているという。
「直近では4月の和歌山1区での衆院補選の候補者を巡って、水面下で激しいツバぜり合いを演じたのです」
とは、自民党系の和歌山県議の談である。和歌山1区補選は、岸本周平知事が昨年の知事選出馬のための辞職に伴うものだ。
「二階氏が裏で推していたのは、自らに近い元沖縄北方担当相の鶴保庸介参院議員です。一方の世耕氏は、元衆院議員の門博文氏推し。当初、鶴保氏で決まりと思われましたが、旧統一教会との関係が週刊誌で暴露され、動けなくなってしまった。一方の門氏も教会との関係はあったものの、密接度で鶴保氏の方が濃いと判断されたんです。二階氏は援護射撃できず、結局は門氏が候補となった次第です」(前出・県議)
だが「その背後には二階氏の老獪な仕掛けもある」と分析するのは、別のベテラン県議だ。
「実は二階氏と世耕氏の対立の根底には、衆院に鞍替えしたい世耕氏の意向がある。鞍替えのターゲットが二階氏の和歌山3区(御坊市・新宮市など)だけに、バチバチの展開に発展するわけです」
二階氏は三男・伸康氏に世襲したい思惑があるが、
「今回、世耕氏が推す門氏が候補になったことで、鞍替えに追い風が吹き始めたと思いきや、そうでもないらしい。というのも、門氏は元二階派で、門氏が当選となれば一応、二階氏のメンツも立つ。負ければ世耕氏のメンツは丸潰れ。おまけに鶴保氏が候補になれなかったことを蒸し返され、『世耕の衆院鞍替えなどとんでもない』という強いメッセージにもなる。二階氏にとっては、どっちに転んでも損はないわけです」(前出・ベテラン県議)
門氏は候補者になったところで、そう易々と勝てない事情もあった。
「過去に中川郁子衆院議員との『不貞路チュー』が報じられていることから、地元では今でも大ヒンシュク。事前世論調査で、支持率が伸びていません。日本維新の会が『門氏なら勝てる』とばかりに、候補者擁立を急ピッチで進めています。門氏が負ければ、世耕氏だけでなく、岸田政権にとっても大きなダメージとなるでしょう」(政治記者)
魑魅魍魎が入り乱れる和歌山補選。最後に得するのは誰か。
(田村建光)