「現状(内閣)支持率は低空飛行で、補欠選挙の結果も1勝1敗だった。支持率が向上しない最大の原因は、国民が期待するリーダーとしての姿を示せていない、ということに尽きるのではないか」
「岸田総理の『決断』と『言葉』には、いくばくかの弱さを感じざるをえない。その弱さが顕著に露呈したのが、今回の減税にまつわる一連の動きだ。『還元』という言葉がわかりにくく、物価高に対応して総理が何をやろうとしているのか、全く伝わらなかった」
10月25日に参院本会議場での代表質問に登壇した自民党・世耕弘成参院党幹事長のこの「苦言」が、いまだ波紋を広げている。内閣総理大臣席に陣取る岸田文雄総理の面前で「異例の岸田批判」をブチ上げてみせたからだ。
本会議場で沸き起こる、どよめきの声。その後、自民党内からは「よくぞ言ってくれた」との称賛の声が上がる一方で、「倒閣反党行為だ」との厳しい非難の声も上がった。
「世耕氏が岸田総理に詫びを入れた」との一部報道も流れたが、世耕氏は10月27日の記者会見で「エールを送る趣旨だったという話をした」として、謝罪報道を完全否定。総理官邸で行われた政府与党政策懇談会の際、岸田総理から「引き続きよろしく」の言葉とともに握手されたことを明かした。さらに返す刀で「(そもそも)謝罪や釈明をするような話ではない」とクギを刺すなど、強気の姿勢を崩していない。
では、身内から異例の「ダメ出し」をされた当の岸田総理は、どう考えているのか。総理に近い岸田派の有力議員が明かす。
「世耕氏は『安倍派5人衆』のひとりだが、安倍(晋三)元総理が凶弾に倒れて以降、安倍派内は後継領袖問題で揉めに揉めている。そんな状況下での総理批判には『安倍派のエースはオレだ!』とでも言いたげな、世耕氏の下心が透けて見える。岸田総理は世耕氏の本会議場でのスタンドプレーを薄笑いで聞き流していたが、内心は『増税メガネと呼ばれて苦しんでいる時に、この野郎!』と怒り心頭だったはずだよ」
増税メガネと下心。これでは支持率が上がらないのも当然か。
(石森巌)