これは二匹目のどじょう作戦なのか。
早期のメジャーリーグ移籍を視野に入れ、いまだ契約更改を終えていないロッテ・佐々木朗希に対し、球界内で「第二のカッツ前田事件の勃発ではないか」と話題になっている。スポーツ紙ベテラン遊軍記者が振り返る。
「西武に在籍していたカッツ前田こと前田勝宏が、1995年末の契約更改交渉の席上で突然、メジャーリーグ挑戦を直訴しました。球団は慰留したのですが、本人は任意引退も辞さない構えで、その後も『メジャーに行きたい」の一点張り。最終的に当時の堤義明オーナーが『チームの和を乱す選手は不要。行かせてやれば』とアキレ果てて移籍を了承した事件です。今回のケースによく似ていますね」
日本プロ野球では1993年オフにFA制度が導入されたばかりで、ポスティングシステムでの移籍制度も時代が時代だっただけに、物議を醸した事件だ。
1992年のドラフト会議で2位指名され、プリンスホテルから西武に入団した前田は「幻の100マイル投手」と騒がれる逸材だったが、在籍3年間で1軍登板はわずか25試合。しかも0勝2敗、防御率4.89という成績しか残していない選手だっただけに、首をかしげる関係者は多かった。
それでも本人の希望が通り、ヤンキース傘下のマイナーチームとの契約にこぎ着ける。2Aノーウイッチや3Aコロンバスなどで5年間プレーしたが、一度もメジャーに昇格することはなく帰国。2021年に中日入りしてからも1軍での登板はなく、わずか1年で退団となった。その後は台湾、イタリア、中国、アマチュアや独立リーグでプレーするなど、数奇な運命をたどってしまった。
佐々木は史上最年少の完全試合を達成するなど、その実力に疑うところはない。それだけに手順を踏み、祝福されてのメジャー挑戦がベストではないか。ゴネまくっての移籍では、イメージに大きな傷が付きかねない。
(阿部勝彦)