主演の木南晴夏はもちろん、女優として出演したモデルでタレントの生見愛瑠、元ピンク・レディーの未唯がくびれた細い腰をくねらせ妖艶なベリーダンスを披露したドラマ「セクシー田中さん」(日本テレビ系)。昨年秋クールに放送され、日曜22時ドラマ枠としては平均世帯視聴率5.6%、個人視聴率3.1%と大健闘した。
ところが、だ。「続編」が期待されていた矢先、大きな衝撃が走った。作者である芦原妃名子氏がなんと、急死したのだ。栃木県内で自殺を図ったというのだが…。
実はその直前、実写ドラマ版の制作陣との間にトラブルがあったと、芦原氏は自身の公式Xアカウントで明かしていた。そして1月28日には一連のポストを削除し、騒動を謝罪する事態になっている。
ドラマをリアルタイムで見ていた視聴者が違和感を覚えた、ストーリー改変の謎が解けた。第9話、第10話の脚本は原作者の芦原氏が自ら担当したというのだ。芦原氏によると、現在も連載中の漫画の世界観を壊さないために〈必ず漫画に忠実に〉〈原作者があらすじからセリフまで用意する〉という条件でドラマ化に合意したにもかかわらず、制作が始まると原作や出演者の設定を変更した内容になったと指摘した。その結果、
〈私が9話・10話の脚本を書かざるを得ないと判断するに至った〉
さらに芦原氏は削除したXの投稿の中で、次のように不満を表明している。
〈「性被害未遂・アフターピル・男性の生きづらさ・小西と進吾の長い対話」等、私が漫画「セクシー田中さん」という作品の核として大切に描いたシーンは、大幅にカットや削除され、まともに描かれておらず、その理由を伺っても、納得のいくお返事はいただけない。 といったところが大きなところですが、他にも細かなところは沢山ありました〉
原作に忠実であれといっても、日曜日22時枠のドラマに「性被害未遂」の性的シーンは盛り込めない。女性視聴者も、木南やめるるが性被害未遂に遭うシーンなど見たくない。脚本家にも、テレビドラマという制約の中で視聴者を退屈させないストーリーにしなければならない「大人の事情」があるだろう。
全てのコミック原作ドラマに言えるのは、俳優とプロダクション、スポンサーが関わってくる以上、原作に忠実なドラマ化など困難な話。その点について、制作側の交渉と説明が足りなかった結果の脚本トラブルではないか。日本テレビは芦原氏の訃報を受けて、次のような「弁明コメント」を出した。
〈映像化の提案に際し、原作代理人である小学館を通じて原作者である芦原さんのご意見をいただきながら脚本制作作業の話し合いを重ね、最終的に許諾をいただけた脚本を決定原稿とし、放送しております。本作品の制作にご尽力いただいた芦原さんには感謝しております〉
一連の騒動と芦原氏急死との関係はわからないが、突然の幕切れはあまりに残念でならない。
(那須優子)