巨人に「異変」が起きている。それは阿部慎之助新監督が誕生したからではない。米・メジャーリーグ(MLB)のスカウトが続々と視察にやってきているのだ。
スカウトの視線の先にいるのは、主砲・岡本和真と、今年阿部監督からすでに開幕投手に任命されている戸郷翔征投手の2人。これまで巨人はポスティング(入札制度)移籍を原則として認めていなかった。現在も球団として「OK」していることは公表していないが、事実上「容認」しているという。
ポスティングによるMLB移籍に断固反対を主張していたのは、読売新聞の渡辺恒雄主筆だ。巨人軍のオーナー在職期間中(1996年12月~2004年8月)に「大切な選手を金で米・大リーグに売り飛ばすようなことはあってならない!」と徹底していた。時が流れた今、巨人の投打の主軸2人のMLB移籍の意思を確認したスカウトたちが、連日のように宮崎キャンプに姿を見せているわけだ。
巨人がポスティング移籍容認に舵を切った大きな理由は、球団経営にある。読売は19年、それまで何度も断っていたスポーツ配信の「DAZN」と包括提携を結んだ。
「年間20億円以上という『DAZN』との契約金は魅力だった。巨人は昨季からは大リーグ30球団のユニホームを手がけるNIKEとも契約しており、こちらも10年という長期契約がオイシかったから。優勝できないシーズンが続き、ホームゲームの観客動員も伸びがない。東京ドームに支払う年間約30億円という使用料も重荷になっている状況なんです」(巨人担当記者)
仮に岡本と戸郷のポスティング移籍が決まれば、数十億の譲渡金が入ることになる。今や売れるものは何度も売れ! とばかりに、栄光の巨人軍には背に腹は変えられない球団経営事情が見え隠れしている。
(小田龍司)