2月16日に史上最高値の3万8915円まであと50円に迫り、週明けも史上最高値更新の期待が膨らんだ日経平均株価は3営業日連続で値下がりし、史上最高値を前に足踏みする展開が続いていた。それが2月22日にようやく、最高値を一時更新した。
それまでの最高値をつけたのは、平成最初の大納会となった1989年12月29日。美空ひばりが亡くなり、長渕剛の「とんぼ」、プリンセスプリンセスの「ダイヤモンド」、Winkの「淋しい熱帯魚」、工藤静香の「黄砂に吹かれて」、森高千里の「17歳」がヒットした年だ。
この年、X JAPANやBOOWY、COMPLEX 、TM NETWORK、BUCK-TICK、THE BLUE HEARTS、爆風スランプら怒涛のロックバンド勢を抑えてアルバム売り上げ1位になったのが、ユーミンこと松任谷由実だった。
松任谷由実は1987年に自身のラジオ番組で「私が売れなくなったら、日本銀行がなくなるような。そこまではいかないかな。富士銀行とか第一勧銀とか三井銀行が潰れる」という伝説の予言を残している。
放送中のドラマ「不適切にもほどがある!」に出てくるような、バブルに浮かれるサラリーマンとともに、飛ぶ鳥を落とす勢いだったユーミンならではの、強気な発言。当時、ユーミンや中島みゆきがパーソナリティーを務めるラジオ番組を聴いていた中高生や大学生の間では「ユーミンが売れると株価も上がって、中島みゆきが売れると株価は下がり、バブルが崩壊するんじゃないか」と、みゆきファンが怒りそうな都市伝説まで飛び交っていた。
だが、実際にユーミンがシングルヒットチャートから姿を消した1990年代後半、彼女が名前を出した都市銀行の名前は消滅してしまう。
バブル崩壊後、暗い世相に寄り添うような中島みゆきの音楽が求められるようになり、確かに2人の歌姫のアルゴリズムは対照的なように見える。実際にはユーミンもコンスタントに楽曲を発表し、6年代(1970年代~2020年代)連続でアルバム1位を獲得、ギネス世界記録に認定されているのだが。
昨年末、ユーミンが桑田佳祐とコラボした新曲「Kissin’ Christmas(クリスマスだからじゃない)」は、12月6日付のビルボードで初週1.8万ダウンロードを記録。デジタルとシングル売り上げという違いはあれど、1994年10月24日に「春よ、来い」がシングル売り上げ初登場1位になって以来、19年2カ月ぶりの初登場1位だった。
それからというもの、新NISAの追い風もあって、日経平均株価が上がり始めた。ユーミンのヒットチャートと株価はやはり、リンクしているようなのだ。
2月17日に東京ドームで一夜限り開店した「スナックJUJU東京ドーム店」でも、JUJUが荒井由美のカバーとWinkの「淋しい熱帯魚」を熱唱。ボサノバの女王・小野リサも荒井由美をカバーしており、このまま「ユーミン効果」で株価がアゲアゲ、景気も給料もアゲアゲとなるのか。しかし、ユーミンの予言には続きがある。
「私の曲が合わない時代、そんな時代が来たらポップスから全部、今までの音楽がダメになる。それくらい、時代が変わる。日本が世の中が軍国主義になる」
(那須優子)