年間を通じて国内外から多くの観光客や出張ビジネスマンが訪れる沖縄県。そんな沖縄でいま問題になっているのが、昨年10月より導入されたインボイス制度(適格請求書等保存方式)だ。企業が接待などで飲食店を利用する際、費用は「接待交際費」として経費に計上できるため、その際に領収書やレシートが求められる。
しかし、飲食店が適格請求書発行事業者の登録を受けていない場合、接待にかかった費用のうちの消費税額分は仕入税額控除の対象外となる。これにより、消費者本人もしくは勤務先が支払う税負担が大きくなるため、利用客は税負担の増加を避けるために、登録していない店を避ける可能性が考えられる。
実際に那覇市内の飲食店を回ってみると、インボイス登録をしていない店が多く見られた。これにバーのスタッフからは、悲痛な声が上がっている。
「うちは女性スタッフが接客するバーなので、県外から出張のお客さんがよく訪れるんです。でも、インボイス制度に登録していないので、トラブルに発展することがよくあります。先日も団体の出張客が来てくれて、合計5万円ほど使ってくれたんです。いざ会計の時に領収書を出すと『登録番号が書いていない』と文句を言われました」
インボイス制度に登録していないことを説明すると、客はイラついたように「じゃあ、2割引いた領収書を出して」と言ったという。これは「2割特例」と呼ばれるもので、免税事業者から課税事業者になった場合の負担軽減措置である。
「お客さんからは『インボイス制度に登録しないならもう来ないよ』と言われることもあります。オーナーにそのことを伝えても、適当に流すだけで登録する気はなさそうですが…」(前出・バースタッフ)
経費を使える出張客が来なくなることは、大きな痛手だろう。インボイス制度に関しては、沖縄特有の「なんくるないさ~」マインドでは済まされなくなってきているようだ。