町田ゼルビアが歴史的なJ1初勝利をモノにした。
Jリーグ第2節、豊田スタジアムで行われた名古屋グランパスVS町田の試合は前半21分、町田が得意とするロングスローのセカンドボールを右サイドから鈴木準弥がクロスを上げ、藤尾翔太がヘッドで押し込み、町田が先制。先行逃げ切り型のサッカーで昨季J2を制した町田はこの1点を守り切り、J1初勝利を決めた。
決して面白いサッカーではない。それでもシンプルなサッカーをする。ハードワークや球際の激しさはもちろんだが、ツートップが前線からプレスをかけ、パスコースを限定させる。制限させることができるから2列目、3列目の選手がセカンドボールを拾え、ルーズボールへの反応も速くなる。そうした意識を全員が持っているから、相手に自由を与えない。誰もサボらないから隙を見せない。
そしてボールを奪えば、カウンターで勝負。無駄なパスをしないで、速くゴール前にボールを運んで勝負する。攻撃陣も清水から獲得した高さのあるオ・セフンと、運動量と決定力がある藤尾のツートップ、2列目の右にテクニックのあるバスケス・バイロン、左にスピードのある平河悠とタイプの違う選手を揃え、そこに下田北斗、柴戸海のJ1経験者が絡んでいく。
もうひとつの武器は、セットプレーとロングスロー。黒田剛監督は昨季から、この練習に多くの時間を割いてきた。面白いサッカーではないと言ったが、このセットプレーはワクワクする。どんなサインプレーでシュートまでもっていくのか。ロングスローも含めて、町田のストロングポイントだ。特に身長194センチのオ・セフンの高さは脅威だ。
守備でも攻撃でも自分たちのスタイルがハッキリしているから、対戦相手はやりにくい。受けて立ったら町田のペースに巻き込まれてしまう。
ただ、町田がこのまま勝ち進むとは思わない。Jリーグで優勝を狙うチームは、開幕を70%ぐらいの力でスタートし、5月ぐらいにピークを迎える。逆にJ1に昇格したチームはそこまでの余裕がないから、開幕から全開でいかないといけない。つまりリーグが落ち着いた時に、どこまで勝ち点を積み重ねているかが大事だ。
町田が気を付けなければいけないことは、開幕2試合でイエローカード4枚、レッドカード1枚をもらっていること。J2は主審の判断だが、J1はVARが導入されている。VARの餌食にならないことだ。あとは得点力。昨季の得点源であるエリキ(昨季、全治8カ月のケガ)がいつ、どういう状態で戻ってくるか。万全なコンディションに戻れば大きな戦力になる。
とはいえ、黒田監督が「我々にとって楽な試合は1試合もない」と言ったようにJ1は簡単ではない。特にハードワークを売りにしている町田のようなチームは、夏の猛暑をどう乗り切るかが大きなカギになる。
うまく乗り切った時には、ひと桁順位の可能性は十分にある。
(渡辺達也)
1957年生まれ。カテゴリーを問わず幅広く取材を行い、過去6回のワールドカップを取材。そのほか、ワールドカップアジア予選、アジアカップなど数多くの大会を取材してきた。