自民党派閥の政治資金パーティー券問題をめぐり、岸田文雄首相(党総裁)は3月17日の党大会で茂木敏充幹事長に対し、関係議員の処分について結論を得るよう指示したと明らかにした。
ところが、その茂木氏自身が政治資金をめぐって追及を受けており、自民党内には、
「茂木さんに他の議員を処罰する資格があるのか」(閣僚経験者)
との声が上がっている。
共同通信によると、茂木氏の政治資金管理団体からは、使途公開基準の緩い別の政治団体に毎年、多額の資金が移し替えられている。政治資金規正法が改正された後の2008年から2022年までの移動額は、2007年以前と比べると、年1.4倍に増加しているという。
資金の移動自体は違法ではないものの、移動先の政治団体は2007年の法改正で導入が決まった厳格な使途公開基準の対象外のため、支出の大半で使途明細がなく、透明性が欠如していた。15年間の移動総額は、4億7940万円に達する。
岸田首相は立憲民主党の蓮舫氏から、3月4日の参院予算委員会でこの問題について質問を受けたが、
「指摘があれば、本人が丁寧に説明するのが重要だ」
と述べている。
自民党派閥の政治資金規正法違反事件では、岸田首相が率いた宏池会と違って、茂木氏が率いる平成研究会は立件対象となっておらず、茂木氏の方が首相よりも有利な立場にあるとみられたが、どうもそうではないようだ。
岸田首相がなぜ、自らの「政治とカネ」の問題で追及を受けている茂木幹事長に処分の対応を任せたかに、関心が集まっている。自民党関係者は、
「茂木さんに対する嫌がらせですよ」
と言い切る。両者の暗闘は続きそうだ。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)