自民党最大派閥だった清和政策研究会(安倍派)の裏金問題で、岸田文雄首相から事情聴取を受けた安倍派幹部の証言として、日本テレビは「キックバック再開の判断には森喜朗元首相が関与していた、と証言した」と報じた。野党側から森元首相の国会招致を求める声が強まることになりそうだ。
安倍晋三元首相が暗殺された後の2022年8月、当時、会長代理だった塩谷立氏、下村博文氏、西村康稔前経産相、世耕弘成前参院幹事長、立件された事務局長の5人が集まった。塩谷氏は衆院の政治倫理審査会(政倫審)で「予定した還付がないと困るという流れの中で『今年は継続』という曖昧な感じで事務的に行われた」と述べたが、他の出席者は「結論が出たわけではない」と証言した。
その後、西村氏が内閣改造で経産相に転じ、高木毅前国対委員長が事務総長になった。この後に安倍元首相が決めた還付取りやめの方針が覆り、裏金は復活した。安倍派中堅議員が語ったところによると、
「塩谷、高木両氏が森元首相のところに相談に行った。安倍元首相が亡くなった後、森さんが持っていた派閥への影響力から考えると、当然のことだった。そこで森さんの『御宣託』で還流が復活した」
塩谷、高木両氏は自らの関与を否定しているが、この中堅議員は猛批判する。
「森さんが決めたことだから自分は関係ない、というスタンスなんだろう。本当に無責任な人たちだ」
岸田首相に近い関係者がボヤく。
「塩谷、高木両氏が本来なら責任をとって議員辞職ないし、離党すべきだった。何もしないから総理自ら聴取せざるをえなくなり、話が森さんにまで広がってしまった。事態を収束するはずが、余計に疑惑が大きくなってしまった」
岸田首相はこれまで政権の後ろ盾となってきた森元首相から事情聴取という、難しい決断を迫られることになった。
(奈良原徹/政治ジャーナリスト)