「残念ながら所管外です」というのは、河野太郎デジタル担当相の「定番」の答弁だ。その河野氏が野党当時、「所管外」を追及した動画が取り沙汰されている。
2012年8月2日の衆院決算行政監視委員会で、河野氏は公務員の「天下り問題」を追及する中で、内閣府原子力委員会に言及した。
「驚いたことに、内閣府原子力委員会からの『政府において講じた措置』という中で、原子力関連事業の実施が特定の独立行政法人及び公益法人に集中し、天下りや利権を生み出す構造については厳しく検証をしろという委員会の項目に対して、『所管外』と答えていますが、なぜ原子力委員会が所管外なんでしょうか」
これに内閣府の担当参事官が答える。
「政策統括官以下につきましては、原子力委員会だけの担当ではなくて全体を見ているということで、その趣旨に入っていないのではないかと考えて、そのようにお答えさせていただいたところです」
だが河野氏は納得せず、声を張り上げた。
「こういう指摘をされた時に『所管外だ』ということを答えるこの原子力委員会及び事務局のいい加減さというのが、(東京電力福島第一原発)事故の引き金を引いた遠因のひとつになっているんだと思います。小委員長、原子力委員会に対して再度、この項目に対する回答をきちんと提出するように求めたいと思います」
自身の質問のことはもうすっかり忘れたのか、2019年9月の防衛相就任会見でも「所管外」を連発。「閣僚ですから、所管の中のものを答えます」と語った。
昨年2月の衆院予算委員会でも、野党側が原発政策などについて質したところ、「所管外でございます」を12回にわたって言い続けた。あるいは今年3月26日の衆院地域活性化・こども政策・デジタル社会形成に関する特別委員会でも、再生可能エネルギーの普及に向けた規制改革を議論する内閣府の会議資料に中国国営企業のロゴが埋め込まれていた問題で「所管外でございます」との答弁を5回繰り返している。
この日の閣議後のオンライン会見では「いろいろとお騒がせをして申し訳ない」と陳謝したが、「所管外」答弁の連発に、質問した立憲民主党の中谷一馬氏ら野党議員は「国会で説明責任を果たしていない」と反発した。
河野氏をめぐっては、自身のXで意見の合わない相手の投稿をブロック(遮断)する対応が批判され「ブロック太郎」と呼ばれている。「所管外」は答弁をブロックする時に使っているようだ。
ちなみに河野氏は2021年9月の自民党総裁選に出馬した際、
「誰かの意見に耳を傾けないとか、こういう意見には耳を傾けないということなく、万遍なく耳を傾けるというのがリーダーの仕事だと思います」
と述べている。
(田中紘二/政治ジャーナリスト)