朝、起きられずに会社を遅刻することが多いと、「起立性調節障害」かもしれない。
これは自律神経の働きが悪くなり脳への血流が低下して、起立時にめまいや立ちくらみを発症する病気。思春期の子供に多く見られる疾患だが、子供の頃に発症し、回復しないまま大人になってしまう場合や、別の疾患の影響で大人になってから発症することもあるので侮れない。
症状には、倦怠感、頭痛、食欲不振なども見られる。特に、立ち上がった時や長時間立っている時、入浴時、精神的なストレスを感じた時などに症状が出やすい。場合によっては、勉強や仕事に集中できなくなったり、失神する危険もあるという。重症例では社会復帰に3年以上かかることもある。
「起立性調節障害」は、気の持ちようなどで回復するものではない。周囲が怠けていると叱ったり、無理強いをさせると、心に負担がかかるためにかえって症状が重くなってしまう危険もある。
自律神経のバランスを崩す要因はストレスが大きく関与している。
改善策は、規則正しい生活を心がけることがポイントだ。朝起きられなければ、自身が無理なく起きられる時間を設定して、毎日その時間に起床するよう心がけることが重要だ。体調がよい時には散歩をしたり、貧血を防ぐため、塩分と水分を積極的に摂ったりすることも効果的である。
一般的には、まだその病名が認知されていない「起立性調節障害」だが、小児科や耳鼻科などの医療機関では診断可能だ。診断方法は、寝た状態と立ち上がった状態での血圧と脈拍の数値の計測だ。治療をすることで完治する可能性が高い病気のため、気長に向き合うことがポイントだ。
田幸和歌子(たこう・わかこ):医療ライター、1973年、長野県生まれ。出版社、広告制作会社を経てフリーに。夕刊フジなどで健康・医療関係の取材・執筆を行うほか、エンタメ系記事の執筆も多数。主な著書に「大切なことはみんな朝ドラが教えてくれた」(太田出版)など。